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REITのM&A —「導管性」が一つのポイント(9)

1年以上前から、REIT(不動産投資信託)の買収に関する問い合わせがある。その買収話の文脈は、大体、3通りだ。まず、REITの価格が下がっているので、単なる純投資としてREITを買い進めたいという場合。二つ目のパターンは、REITビジネスを支配下に置いて自ら行いたいという場合。そして最後のパターンは、REITを買収後、投資法人が保有する不動産をすべて現金化して利益を上げたいという場合である。これまで実際に起こっているのは最初の二つで、そのうち典型的なREITのM&Aとして二つ目のパターンが注目される。

特色— 運用会社と投資法人のダブル買収
そのパターンのM&Aで特徴的なことは、所期の目的(REITビジネスの支配)を達成するためには、運用会社と投資法人の二つの法人を買収する必要があることである。REITは証券取引所で買えるが、それはあくまで投資法人の投資口であって、それを取得するだけではREITビジネスを支配することはできない。投資法人は、法人とはいえ、その実質的な意思決定は運用会社によってなされているから、運用会社こそ買収者の支配下に置く必要がある。買収の方法について、運用会社の買収は、従前のスポンサーから株式を買い取るのが一般的である。他方、投資法人の買収は、投資口について市場取引、市場外取引、公開買付、第三者割当が実際に用いられている。今後は、平成21年税制改正もあって、他の投資法人による合併の可能性も高まっている(後の回で触れる)。

税務の視点— 「導管性」
上記では、投資法人の「買収」と便宜上述べたものの、実際には投資法人の全投資口の50%超を取得しない。その理由は、「導管性」というREITのタックスメリットの維持にある。「導管性」とは、投資法人において法人なのに法人税が課されない、あたかも「導管」のように法人レベルを通り越して投資家レベルでのみ課税されるという恩典である。もう少し正確にいえば、投資法人が配当可能利益の90%超を投資家に対して配当する限り、所定の要件さえ充たせば、かかる配当を投資法人の課税上、損金に計上できるということである。その要件の一つに、当該投資法人が当該事業年度終了時において「同族会社」に該当しないことというのがあって、「同族会社」とは一株主グループによって投資口総数又は総議決権数の50%超を保有されているものをいう(租税特別措置法67条の15第1項2号ニ、施行令39条の32の3第4項)。このために、買収者は、投資法人の全投資口の50%超を取得しないようにする。例えば、2008年8月、オークツリーという米系ファンドがオランダ法人を通じてリプラス・レジデンシャル投資法人に対して公開買付を行ったとき、買付数の上限として49%を設定していたのは、「導管性」を維持するためと思われる。

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