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Q7「TPPのようなメガFTA/EPAの貿易を考えるにあたり、どのような点に留意すればよいですか?モデル事例を挙げて説明してください。」

ある欧州の有名ブランド会社A国(輸出者a)がハンドバッグをB国(輸入者b)に販売するケースです。

ここでの前提条件は、

・A国原産ハンドバッグの関税はCIFB国価格の2.7~16%
・税引き後キャッシュ・フローを最大化したい

ということです。

ビジネス案件で、事実関係がスパゲティボウル状になっており、問題点を洗い出せなくなることがあります。TPPのようなメガFTA/EPAの貿易では、事実関係を下記のように、分けて考えると、問題点やビジネスの進め方が、はっきりしてきます。

【事実関係を4つに分解して考える】

①物流
②商流
③決済の流れ
④書類の流れ(所有権はどこで移転するか)

【モデル事例】
簡単なモデル事例を使ってご説明します。商物分離で、製造が第三国に、商流も第三国が絡む事例です。ハンドバッグ産業を想定します。
A国を当初想定輸出国(輸出者a)B国を輸入国(輸入者b)とします。輸出者aは、有名ブランド会社ですが、B国向けの製品をTPP域内の、もっと労働力の質が高く安価なC製造国(製造者c)で生産しようと考えています。なぜなら、A国原産のバンドバッグの関税は、CIFB国価格の2.7~16%と高いからです。CIF価格とは、B国までの、コスト、Insurance(保険)、Freight(海上または航空運賃)を足し合わせた価格で、この価格に関税を課すと、B国の関税法では、規定されています。
輸出者から製造委託者に変わったaは、欧州の有名ブランド会社ですが、製造特許権・意匠権(デザイン)は、低税率D国d子会社に、譲渡しました。
B国からA国に注文を出しますが、A国はC国c製造者に製造を委託します。C国c製造者の製造は、TPP域内100%製造ですから、TPPの原産ルールを、満たします。

①物流
A国(輸出者a)からB国(輸入者b)への貿易が、A国からC国(製造者c)への製造委託になります。物流は、C国(製造者c=輸出者c)からB国(輸入者b)への流れになります。C国(製造者c) B国(輸入者b)共に、TPPの構成メンバーで、両者間の貿易には関税がかからないからです。
②商流
商流は、A国(製造委託者a)からB国(輸入者b)の流れになります。その流れの中に、低税率国D国の子会社dが入ります。A国からC国(製造者c)へ製造委託しますが、製造特許を、低税率国D国の子会社dに譲渡するとします。ロイヤルティをD国(子会社d)に集めて、貯めておいた方が、グローバルでの税引き後キャシュ・フローは増えるからです。
③決済の流れ④書類の流れ(所有権はどこで移転するか)は、①物流と②商流をベースに、決まってきますが、これについては、後のQuestionで詳述します。
なお、留意点としては、d子会社が、A国のタックス・ヘイブン税制の要件を満たすと、低税率国D国d子会社の所得は、A国所得と合算課税されてしまいます。
d子会社は、この要件を満たさないように、行動しなければなりません。

ここでは、簡単なモデルケースでしたが、日本の電気大手会社などは、子会社が1,000社以上あります。製造委託工場を入れると、ものすごい数になります。企業は、これらをビークル(物流・商流上のチャネル)として、今後、IoT、AIを使ってTPP戦略を立て、グローバルでの税引き後キャシュ・フローを最大化するように行動していきます。

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