千倉書房 連載ブログ

千倉書房 連載用ブログ


Out-In M&Aの税務(インバウンド)— PE問題と近時の税制改正(17)

サブプライム問題以前、外資系投資ファンドによる日本の会社の株式への投資が目立った。このとき、多くの外資系投資ファンドは、日本の高税率な課税(実効税率40%強)を避けるべく日本でPE(恒久的施設)があると認定されないように非常に気を使っていた。PEが認定されると、日本国内の源泉にかかる事業所得について、日本企業と同じように課税されてしまうからだ。しかし、日本にPEがあると認定されないようにいくら意識したとしても、リスクは完全には払拭できなかった。つまり、外資系ファンドが日本国内の投資運用業者を使って日本の会社の株式へ投資している場合、その投資運用業者が「代理人PE」と認定される可能性が残る。そんな心配を解決しようという趣旨の税制改正が平成20年と平成21年の2年連続でなされた。

平成20年度税制改正—-「独立代理人」という概念

平成20年度税制改正で、代理人PEの範囲から「独立代理人」が除外されることが明文化された(法人税法施行令186条、所得税法施行令290条)。上記の例に即して述べると、上記の国内投資運用業者が、外資系ファンドから「独立性」を維持して、かつその「通常業務」の範囲で行動している限りは、外資系ファンドの「独立代理人」に該当し、「代理人PE」とは認定されないということである。この点、「独立性」は、?法的独立性と?経済的独立性から判断される(平成20年6月27日金融庁「参考事例集」)。?は代理人側にどれほどの裁量権が認められているか、?は代理人側が経済的にどれほどのリスクを負担しているかということのようだ。ここでのポイントは、それらの基準は抽象的であって個別事案への具体的な適用に難があるところだ。実務担当者としては判断に困る場面がありうる。だからこそ、もう少し使いやすいルールが求められて平成21年度税制改正に至ったと思われる。

平成21年度税制改正—- 非業務執行有限責任組合員のための特則

これは、投資事業有限責任組合という特定の組合形式を通じて日本に投資する非居住者・外国法人のための制度である。本来は、組合を通じて日本に投資する場合、他の組合員が内国法人だったり日本にPEを持っていたりすると、自分自身がPEを持っていなくても、それがあるものとして扱われる。したがって、従来、PE問題を避けたい場合には組合形式による投資は避けられてきた。それがこの税制改正で変わった。投資事業有限責任組合(あるいはそれに類する外国の組合)を通じた投資であれば、?自分が有限責任組合員で、?業務執行には加わらず、?自分自身は日本にPEがなくて、?組合財産に対する持分割合が25%未満であれば、その外国法人・非居住者は、日本にPEがないものとして扱われるというのだ(租税特別措置法41条?21、67条?16)。これは要件が明確で、実務においても使い勝手はよさそうだ。

コメントをどうぞ

コメントを投稿するにはログインしてください。