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Out-In M&Aの税務(インバウンド)—日本型三角合併の余計な問題(21)

  今回も、外国企業が三角合併により日本の会社を買収する場面をとりあげる。三角合併を準備する上で必ず直面する問題は、合併の受け皿会社(買収ビークル)に合併対価としての親会社株式をどのような方法で持たせるかだ。何故それが問題になるかというと、会社法の文言上、合併当事者である買収ビークル自身が合併対価としての親会社株式を対象会社の株主に交付することになっているため(会社法749条参照)、その前提として買収ビークルが親会社株式を保有しておく必要があるからである。米国の制度であれば買収ビークルが親会社株式を保有する必要なく三角合併を実行できることと比べると、日本ではそれだけ余計な問題があるということだ。

買収ビークルが親会社株式を取得する方法 
  どうやって、三角合併を行う前までに買収ビークルが親会社株式を保有するようにするか?二つの方向性しかない。それは、買収ビークルが親会社自身から株式を取得するか、あるいは親会社以外の者から取得するか。現実的な選択肢はどちらか?第三者から取得しようとすると基本的には時価もしくはそれ以上の現金が必要となるのが通常だから、それを避けるべく親会社自身から取得する方法をまず考えることになろう。すると、単純な方法としては、親会社が買収ビークルに対し、親会社株式を新たに発行するか、あるいは既存の自己株式を交付するという方法が考えられる。ここで株式発行や自己株式の処分の対価をどうするかという問題がある。何故問題かというと、できれば現金を使わずに行いたいところなのだが、そうしてしまうと日本の会社法上は株式の有利発行として株主総会の特別決議が必要ということになって、それは避けたいという場面も多いからである。この問題への解決として、現在、様々な方策が議論されているが、実務的に確たる手法はまだ存在しない状況だ。実務的には確実を期して、有利発行であると開き直り、親会社における株主総会の特別決議をとりつつ、親会社株式が備忘価格で買収ビークルに対して発行される方向でのプランニングもあるかという気もする。いずれにしても本件は親会社が外国会社であることを前提としているので、有利発行に該当するのを避けたいという日本の会社法の問題は出てこない。親会社で株主総会が必要か否かというのは、外国の法律の問題ということになる。むしろ株主総会の承認をとるつもりで話が進む場面が多いとも思われる。

この問題に潜む日本の税務上の問題
 買収ビークルが三角合併のために親会社株式を備忘価格で取得した場合、買収実行までの一時的な保有とはいえ、買収ビークルに受贈益が発生する。日本の法人税(税率約40%)が課税されることになる。この課税を避けようとすると、買収ビークルとしては親会社株式を公正価格で取得すべく現金を使わざるを得ない方向になるかもしれない。親会社やその他グループ会社から融資や出資を受けるという方向である。

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