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Out-In M&Aの税務(インバウンド)— 日本株への投資のタックスプランニング(18)

日本株に投資する外資系企業が日本での課税を検討する場面。PE問題をクリアーしたとして(前回参照)、次に何を考えるべきか。それは、配当と譲渡益(キャピタルゲイン)という二種類の所得に対してそれぞれどのように課税されるのかということ。なぜなら、株式に関して所得が発生する場合とは、配当を受け取る場面と株式を譲渡する場面がメインだから。それらの課税関係について、原則と重要な例外を整理する。

配当の課税 
原則として日本で源泉徴収税に服する。その税率は20%である。例外としては、租税条約による軽減税率の適用あるいは免税だ。

キャピタルゲインの課税
 原則として日本で課税されない。
 例外的に課税される場合は、実務的に重要なものとして二つある。一つ目は、当該取引が「事業譲渡類似」に該当する場合(法人税法施行令187条1項3号ロ、6項)。株式の譲渡が対象会社の事業を譲渡することと実質的に等しいような場合には日本の法人税が課される。具体的な基準としては、対象会社の株式を発行済株式総数の25%以上保有していて、かつ当該年度において5%以上の株式を譲渡した場合に課税される。PEがないので地方税がないにしても税率にして30%程度の課税となる。
 他方、二つ目の例外は、対象会社が「不動産関連法人」に該当する場合だ(法人税法施行令187条1項4号)。対象会社が不動産をたくさん保有している場合には、その株式の譲渡は不動産を譲渡するのと実質的に等しいということで課税される。具体的な基準は、対象会社の総資産のうち50%以上が国内の不動産である場合に、その対象会社は「不動産関連法人」ということになる。
 なお、これらの例外に該当して課税されそうな場合でも、租税条約によって納税者にとって有利になることもある。例えば、日米租税条約が適用される場面では、「事業譲渡類似」に該当する場合でも課税されないので、対象会社の株式を25%以上保有していてもその限りで心配無用である。(もっとも、日本では課税されなくても米国で課税されることを忘れてはならないが。)

タックスプランニングにおける留意事項
 上記を踏まえると、タックスプランニングにおいて、まずは租税条約によるタックスメリットがないか検討する。次に、租税条約による解決策が見当たらない場合、配当についてはどうしようもないものの、キャピタルゲイン課税の対策として、対象会社に対する株式保有比率を発行済株式総数の25%未満におさえようという方向性もありうる。特に、買収者の所在がケイマンのようなタックスヘイブンと呼ばれる地域である場合には日本との間で租税条約が締結されてないので、そのようなタックスプランニングになりやすい。

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