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[M&A各論?] 「現金交付合併」と平成22年度税制改正(24)

平成22年度税制改正には、「現金交付合併」を今まで以上にやりにくくする側面がある。

「現金交付合併」とは?
「現金交付合併」とは、現金を対価とする合併である。例えば、A社がT社を吸収合併する場合、通常の合併であれば、T社の株主はT社株式を失う代わりにA社の株式を受け取るところ、「現金交付合併」ではT社の株主は、A社株式ではなく現金を受け取る。会社法改正により、2007年5月1日以来、実行可能である。

スクイーズアウト手法の一つ
実際、どのような場合に「現金交付合併」が用いられるのか?一つの場面としては、少数株主を強制的に追い出す「スクイーズアウト」とよばれる局面だ。上場会社について、MBOや完全子会社化が行われるとき、そのプロセスには必ず「スクイーズアウト」という側面が伴う。「スクイーズアウト」の具体的手法として、現在の実務では「全部取得条項付株式」を用いたものが一般的であるものの、それ以外の手法として「現金交付合併」が存在する(例:サンクスジャパンのMBOのケース)。

「現金交付合併」の税務上のデメリット 
「現金交付合併」には税務上のデメリットがある。合併を行うと、対象会社の資産に含み益があるとそれが実現して法人税が課せられるし(実効税率約40%)、対象会社の株主においても、受け取った現金について、みなし配当や譲渡益と評価される部分について課税される。

税務メリットが発生する場合あり?
もっとも、一部の実務家からは、「現金交付合併」の有用性を強調する文脈で、上記の税務上のデメリットが減殺できる場合もある旨、述べられていた。具体的にいうと、「現金交付合併」の前に、合併の存続会社が消滅会社の株式を可能な限り取得することによって、対象会社の株主としての税務メリットもとれるというものだ。そこでいう税務メリットとは、対象会社の株主が合併対価として受け取る現金について、「みなし配当」と「譲渡損」の二種類から構成されるという場合があり、法人株主であれば「みなし配当」について受取配当益金不参入制度を適用できるので、「譲渡損」のみを計上するというものである。要するに「現金交付合併」では、確かに上記の税務上のデメリットがあるものの、対象会社株式を多く取得した上で合併を行えば税務メリットもあって、上記デメリットがある程度減殺されるという論調だ。

平成22年度税制改正と「現金交付合併」 
しかし、平成22年度税制改正では、その税務メリットすら失われるようだ。自己株式取得を予定して取得した株式については受取配当益金不算入制度が適用されず、また合併存続会社が保有していた消滅会社の株式(「抱合株式」)については譲渡損を計上できなくなる。

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