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[M&A各論?] 法人株主と自己株式取得 、そして平成22年度税制改正(23)

法人株主のタックスプランニングの前提知識
法人株主が株式を手放す場合、第三者に譲渡するよりも、発行会社自身に買い取ってもらったほうが税務コストは低い。何故ならその場合、発行会社による自己株式取得ということになり、株式の譲渡人にとって、税務上、二種類の所得が生じるものと取り扱われるからである。二種類の所得とは、?配当所得と?譲渡所得(キャピタルゲイン)である。譲渡人からすれば、株式の譲渡対価を受け取るだけなのだが、その対価のうち、「資本」の性質を帯びている部分を越えているところは配当として扱われる。「みなし配当」である。そして残りの部分(つまり「資本」の性質を帯びている部分)については、譲渡人がその株式の取得価格と比較して、それより多い部分があれば譲渡益だし、他方、それより少ないのであれば差額部分は譲渡損として扱われる。ここまでの取り扱いは、当該株主が法人であろうと個人であろうと変わりないのであるが、法人株主だと個人株主と異なり「受取配当益金不参入」という併せ技を使える結果、株式の譲渡対価のうち「みなし配当」については、その全部または一部について課税されないのだ。正確にいうと、法人株主による株式保有比率が25%以上でそれが6カ月以上継続している限り、「みなし配当」の全額について課税されず、それ以外の場合には、「みなし配当」の50%について課税されない。

個人株主による株式譲渡
ちなみに個人株主のほうは、法人株主と状況が正反対で、株式を手放す場合、発行会社による自己株式取得に応じるよりは、第三者に譲渡するほうが税務コストにおいて一般的に低いと考えられている。その理由は、個人には「受取配当益金不参入」の恩典はないということに加えて、株式の譲渡益は分離課税で一定の税率に服するので(非上場株式:20%、上場株式:10%)、累進課税の配当所得に比べると、高額所得者にとっては譲渡所得のほうが低い税率という場合が多いからである。

平成22年度税制改正
平成22年度税制改正では、法人株主が発行会社による自己株式取得に応じた場合の上記タックスメリットに、一定の制限を加えた。それは以下の点である。
? 100%の親子関係のある会社同士で、子会社による自己株式取得が行われた場合、親会社において、譲渡損益を計上できないこと。
? 発行会社による自己株式取得を予定して株式を取得した場合、当該株式について自己株式取得に応じても、みなし配当について益金不算入制度を利用できないこと。

次回は、この税制改正の影響について、具体的に考えてみる。

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