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海外への本社移転の検討 (1)

「なぜ、海外への本社移転なのか?」
 日本企業が本社機能を海外に移そうという話が増えています。具体的には、本社そのものをシンガポール、香港その他の国々に移す話であったり、多種な事業を営む会社がその一つの事業に関する本拠地を外国に移す話であったり、あるいは資本関係を根本的に変更して親会社を海外に置くという話もあります。実例として、サンスターがMBOを行う過程で親会社をスイスに置き、当該親会社に本社機能を移すことを発表しました(2007年)。また、パナソニックは、2012年4月から調達・ロジスティックスに関する本部機能をシンガポールに順次移転していくことを公表しています。

なぜ、本社機能を海外に移すのか?

それは、売上とコストの観点からある程度説明できます。

 売上の観点からは、海外売上の割合が高いほど、日本に本社を置く必要性が弱まります。また、多種な事業を営む企業にとっては、海外売上の割合が高い事業があれば、当該事業の本拠地を日本に置く必要もありません。

 コストの観点について、海外に本社を置いた方が日本に本社を置くよりもコストが安いという日本企業が増えています。ここでいうコストとは、広い意味のコストを指します。具体的には、原材料の仕入値や受けているサービスの対価にとどまらず、税務コストや、エネルギーコストも含む総称的な意味です。税務コストの話でいえば、日本の法人税の実効税率は現在38%程度であり、世界で一番高い。海外の低税率国に企業活動の機能を移すほど、当該国に帰属する所得が増える代わりに日本に帰属する所得が減ります。その分、日本の法人税が課されず、税務コストを下げることができます。また、エネルギーコストについては、特に原子力発電への対応など、日本政府が今後どのようなエネルギー政策をとるかによって、日本での事業活動はエネルギーコストがかかりすぎる状況に至る可能性があります。そのような状況に至った場合、日本企業としては、海外に企業活動の機能を移して安価なエネルギーを求めた方がよいという考えが強まると思います。

 要するに、海外売上が多くて、かつ海外に本社を移した方が低コストを実現できるという条件を満たす場合には、日本企業としては海外に本社を移すのが合理的ということです。

 そして、現在の円高の状況は、海外に本社を移すための初期投資のコストが低いことを意味するので、海外への本社移転の傾向が助長されると言えましょう。

 今後、本連載においては、日本企業による海外への本社機能の移転に関して、いろいろな角度から検討してまいります。

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