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行政上の権利救済手段を点検(9)

納税者は税務行政当局(税務署など)の更正・決定処分などに不服がある場合、行政上の権利救済手段である「不服申し立て」と司法上の権利救済手段である「税務訴訟」を行える。不服申し立てには「異議申し立て」と「審査請求」がある。


異議申し立ては、処分を行った税務署などに対して提起する。異議申し立てで納税者の救済(処分の全部または一部の取り消しの決定)がなされる割合は平成18年度(2006年度、4月1日から翌年3月31日までの期間10.2%で、高いとは言えない。


あくまで処分を行った当局内で審理を行うため(処分を行った以外の職員が審理を行うにしても)中立な立場で公正、客観的な判断を下しにくいことが、その理由の一つだろう。また、審理を行う当局が、国税庁が発した税務通達と異なる解釈で決定を下すことは原則としてできない。

審査請求は、原則として異議申し立てに対する決定になお不服がある場合、国税不服審判所(国税庁の特別機閏)に対して提起する。審査では納税者と処分をした税務行政当局の主張の食い違う点(争点)を主な審理事項とする争点主義がとられる。

審査は公正妥当な結論を導くため、複数の審判官による合議により行われる。審査講求に理由があれば、処分の全部または一部の取り消しか変更の裁決、理由がなければ請求の棄却がなされる。税務通達と異なる解釈により裁決などを行うこともできる。ただし審査を請求した納税者の不利益になるような処分への変更はできない。なお、裁決が出るまでに最低で1年、場合によっては2-3年かかることもある。その間、原則として更正処分の執行は停止されない。


審査請求で納税者が救済される割合も平成18年度で12.3%に過ぎない。審判官らの多くが国税局や税務署からの出向者であるなど人事面で国税庁の影響が避けられないことがその理由の一つだろう。審査請求は訴訟より費用や手間が少なく、簡便に納税者の権利救済を図ることができる。これを有効に機能させるには、人事面で国税庁の影響を排除することが必要である。それゆえ、審判官に民間の税の専門家や学者を登用するなど国税不服審判所の独立性を高める施策が求められる。

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