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納税者の権利を点検(12)

 税務行政の手続きには税務調査における立ち入り検査など強制力を伴うものが少なくない。憲法31条(法定手続の保障)は公権力による不当な強制力の行使を防止する趣旨の条文である。同条文を引用する。

31何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」

これを受け1993年には行政手続法が制定されたが、税務行政については多くの規定が適用除外とされ、国税通則法の規定が用いられていることは、この連載の冒頭でも述べた。

 国税通則法は、不服申し立てや訴訟など事後(更正、決定など行政処分後)の手続きを設けているが、事前手続きについてはほとんど規定がない。たとえば税務調査の手続き規定などが不備である。

 これに対して主要国では税務調査の事前通知、情報の提供、終了通知などに具体的規定を設けている。さらに「納税者の権利憲章」を公表し、納税者の権利の確立を図っている。

 納税者の権利憲章は納税者にその権利を知らせる一方、その擁護を税務行政当局に再認識させることを目的とする。そこでは情報と援助、公正、プライバシーなどを納税者の権利としてあげている。

 わが国政府は一貫して、現在の法体系の中でも納税者の権利は保障されており、「憲章」の制定は必要ないとの立場をとってきている。だが、東京税理士会は「平成18年度税制改正及び税務行政に関する意見書」で、国税通則法を改正し、納税者権利の章典制定を行うことの要望を出した。この要望は、「平成21年度税制改正及び税務行政に関する意見書」においても継続している。

 納税者は公権力を行使する税務行政当局に比べ弱い立場にあり、その権利を強化し保護するためには手続きの適正化・透明化の推進が欠かせない。さらに税務行政当局がそれを順守し納税者の権利を尊重することが国民の信頼や協力を得るためのカギである。

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