千倉書房 連載ブログ

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納税者の意思改革の必要性(15)最終回

 わが国の税務行政のしくみを点検した上で追徴課税など更正処分までの事前手続きの不備など納税者の権利の保護が十分図られていない点を指摘してきた。また、納税者救済のための不服申し立てにおいて国税不服審判所が少なからず行政の影響を受けているなどの問題点も示してきた。

 過去には「必ず負ける」といわれていた税務訴訟において、納税者が勝訴する訴訟も散見されるようになった。判決理由は案件ごとに異なるが、裁判所が税務行政当局側の法令解釈の裁量を厳しくとらえている点が共通している。これは前回の記事で指摘した課税庁にとって都合の良い論理を用いて、税金を取り易いところから取る裁量主義による課税を意味している。現状において裁量主義による課税を改める唯一の手段が税務訴訟である。それ故、所得税・法人税などの申告で更正処分を受けた際、法令解釈・適用が不当と思われる場合は税務訴訟の活用を検討することも必要だ。

 税務訴訟は国を相手取った行政訴訟であり、告訴するには相当の覚悟がいる。だが、解釈が分かれる税法について司法の判断を仰ぐことは法の安定した運用につながる。国民全体の利益のために訴えを起こすことも法治国家における国民の使命といえよう。

 今後、税務行政に関する法律・制度を改革して納税者の権利を強化し、公正・透明性を高める必要がある。納税者は傍観するのではなく改革に積極的に関与するべきだ。同時にわれわれは納税義務だけでなく納税者としての権利も自覚すべきだ。そのためにも納税者の権利憲章を認める必要がある。納税者の権利憲章は、納税者にその権利を知らせる一方、その擁護を税務行政当局に再認識させることを目的とする。残念ながら、わが国には「納税者の権利憲章」がない。「納税者の権利憲章」の早急な制定が望まれる。また、納税者は権利の主張だけでなく、義務の遂行も必要となる。納税者番号制度は納税者の義務を質す制度であるが、その制度の真の目的は「公平」な税の執行にある。当に正直者がばかをみない社会を醸成するに大事な制度と解する。

 今こそ納税者は、国を訴えることに躊躇しない、権利行使することにためらわない、納税者の義務を粛々と遂行する必要があることに目覚める必要がある。「お上に逆らわない、だから、税金は誤魔化す!」という納税者の意識の改革が求められる。

税制の基本は「公平」「中立」「簡素」である。私はこの税法の基本を踏まえた上での納税者の意識改革に関する議論、少子高齢化の波が押し寄せる21世紀の下での税制改革に関する議論を今後も続けたい。そして、微力ながら情報発信を続けて行きたいと考えている。

連載記事の推敲にあたって千倉書房の川口理恵さん、黒羽夏彦さんからはきわめて有益なコメントをいただいた。最後になったが、ここに記して謝意を表したい。

おわり

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