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米国における移転価格税制及びその執行について(16)

  今回は移転価格調査について説明させていただきます。

  1998年7月22日に「内国歳入庁改革法」(以下IRS改革法と称します)が成立し、IRSの組織が、それまでの地域別(32の地域事務所、10のサービスセンター)かつ機能別(調査、不服審査、徴収、査察、申告処理、納税者サービス)の管轄体制から、以下の4つの納税者グループ別に担当部局(Division)を設置し、地域毎に異なる扱いを受けているという納税者の批判に応えました。

1)?給与又は投資所得者
2)?小規模法人又は自営業者
3)?大、中規模法人
4)?免税・政府関係団体

  このうち、大・中規模法人はLMSB局(Large and Mid-Size Business Division)が担当し、業種別に編成されており、専門的な調査が実施されます。また、LMSB局は、大・中規模法人のほか、国際課税の調査を担当します。IRSの行う税務調査に関しては、内国歳入マニュアルの第四部に規定されており、LMSB局の本部が年間計画のドラフトを作成し、LMSB局の各部門がその詳細を検討し年間の優先順位及び目標を計画します。納税者の総資産、総収入、外国資産、関連取引等7項目の内容を規模等に応じてポイント換算し、調査対象者と調査方法が決定されます。移転価格調査に関しては、2003年1月22日、LMSB局長は、移転価格調査の新方針(Transfer Pricing Compliance Directive)を公表しましたが、この移転価格調査に関する公式アプローチで以下の内容を明示しています。

1)移転価格調査の着手時に、移転価格文書を納税者に要求すること
2)同時文書の法定提出期限(30日)を厳格に適用すること。軽微または意図しない違反であっても調査官には限定的な裁量しか与えないこと
3)一定要件をみたした場合には、必ずIRC6662(e)条に基づくペナルティーを主張すること。規定に従って同時文書が作成・提出されない限り、ペナルティーは免除されないこと

  移転価格調査の新方針を受けて、近年、IRSが移転価格調査を強化しているとのニュースが聞かれます。
IRSの移転価格調査に対しては、専門的な会計事務所等を活用し、適格な経済分析等を行い、内国歳入法第482条関連の財務省規則やOECD移転価格ガイドラインに基づいた理論的な対応が必要です。
  仮に、IRSから移転価格調査に基づいて更正処分を受けた場合には、内国歳入庁審査部への審査請求(IRS Appeals)、租税条約に基づく相互協議の申立て、審査請求と相互協議を同時行う同時審査手続(Simultaneous Appeals Procedure)があります。なお、更正処分の前に、調査官と納税者が手続きに合意して行われる簡易審査請求(Fast Track Appeals)がありますが、この手続きは、審査部の審査官が中立的な立場で納税者と調査官が合意できるよう参加して解決を図ります。いずれの手続きにも一長一短がありますので専門家と相談されることお勧めします。

  以上、米国の移転価格税制及びその執行についてお付き合いいただきありがとうございました。今回をもって終了させていただきます。

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