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米国における移転価格税制及びその執行について(15)

  今回は事前確認制度(歳入手続2008-31)について説明させていただきます。
  事前確認(Advance Pricing Agreement :APA)は納税者とIRSが移転価格税制及び租税条約の下で原則に則りかつ協調的な方法で将来の移転価格問題を解決するための納税者の自発的プロセスの事を言います。もっと平たく言えば納税者が自主的に移転価格算定方法や目標とすべき独立企業間レンジ(例えば、売上高営業利益率に2%から4%の幅をもたせること)を提案して税務当局から前もって合意をとりつける制度のことです。APAには二種類あり、ユニラテラル(米国税務当局のみとの合意)とバイラテラル(米国及び相手国の税務当局との合意)があります。特別な事情がない限り通常はバイラテラルのAPAが申請されています。このAPAを申請することで納税者は申請期間については移転価格調査を受けるリスクを回避することができ、また合意された算定方法を適用することで将来の移転価格面での法的安定性と予測可能性を確保することができます。

  米国の事前確認制度は、1991年に「歳入手続き」において発表されましたが、この制度の前身は、わが国が移転価格税制を導入した直後(1987年)に納税者の移転価格調査に対する不安感を払しょくするために通達によって創設された事前確認方式です。その後、OECD租税員会が、1995年に、この制度を認知したことから世界的な広がりをもって採用する国が拡大しています(現在、38ヶ国で採用)。

  事前確認の申請手続きは、わが国とほぼ同様であり、事前相談?申請書の提出?IRSのAPAチームの審査(ユニラテラルAPAの場合はここで終了)?バイラテラルAPAの場合は、APAチームからIRSの権限ある当局(相互協議チーム)への相互協議ポジションの提案?二国間の相互協議の開始?二国間の合意となります。複雑な取引かそうでないか等で差はありますが、日米のバイラテラルAPAの場合は申請から1.5年から3.0年程度(私の経験上)で合意に達しています。

  IRSは、第10回目のAPAに関する年次報告書を2009年3月27日に公表していますが、これによると、2008年末までの累計で、申請件数1,252件、締結件数841件となっています。また、2008年の申請件数は123件で過去最高を記録しています。一方、わが国の状況は、国税庁の発表によると、2009年6月末までの累計で、申請件数720件、締結件数511件となっています。2008年の申請件数は130件で米国と同様過去最高を記録しています。

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