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第十回 オールジャパン

前回の連載で、余剰人員を企業がかかえなければならない労働法制のある国では、余剰人員が価格競争力の足かせとなるが、労働者保護の緩やかな国では、企業の国際競争力に対する悪影響を抑制できると述べた。
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国際競争をしている企業は日本の全企業の約5%程度といわれる。この5%の企業に国際競争を勝ち抜いてもらうために、労働法制を緩やかにし、就労支援費用などのそのために生じる費用をオールジャパンで負担する政策は望ましいのだろうか?
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多国籍企業は日本という共同体の利益という視点ではなく、株主利益という視点で行動する。従って、国内の雇用を犠牲にして海外に生産ラインを移転することもあれば、国内の税収を犠牲にして海外に納税する選択もする。上場企業の外国人株主比率は約30%といわれる。もはや日本の会社であっても、日本の国益と同じベクトルをもっているとは限らない。

そのズレを前提としたときに、どれほどの企業支援をオールジャパンで負担すべきという議論こそ、国民の合意を得るべき事項である。日本人選手がオリンピックで金メダルを取るのは嬉しいことである。それは日本という共同体の一員としてそう思っているにちがいない。こと企業活動に関しては、企業が国のために奉仕するのではなく、企業が国を選ぶ時代であるということを念頭に置かなければならない。外国で雇用を創る日本企業よりも日本で雇用を創る外資系企業の方が、国民厚生には貢献している。

このベクトルのズレを前提とすれば、日本企業の競争力を高めることではなく、日本の国際立地競争力を高めることの方が重要ということになる。国を選ぶことができる一部の国民を除いて、多くの国民は企業のように日本の国民負担率が高いからといって国外に脱出することはできない。もし国際立地競争力で他国に劣るようなことになれば、結局国を選ぶことができない国民に最後の負担がしいられることになる。

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