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第十四回 デフレ

デフレを巡ってはさまざまな原因が議論される。
1.?途上国の安価な労働力を背景にした生産コストの低下による価格調整
2.?高齢富裕層の過剰貯蓄=需要不足
3.? 金融緩和不足
4.? 競争過多による過度の価格競争
5.? 消費者の発言力の強化
6.? インターネットの普及による価格競争の激化
7.? デモグラフィー
8.? イノベーションによる生産性の向上
などが主な議論である。

デフレとは物価水準の下落であり、個別の製品の相対価格が下落する現象ではないが、現実的には物価水準が一様に下落することはないのであろうし、物価が下落する理由もいろいろなものの組み合わせと考えるのが妥当と思われる。デフレの原因の特定が違えば、デフレ解消の処方箋も異なるので、適切な事実の認識をしなければならない。
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デフレの問題は、実質金利を押し上げることで、民間投資需要が減退することといわれる。もし物価水準が各産業・製品で一様に下がり、労働分配率・資本分配率に変化がないのであれば、デフレ自体に大きな問題はないのかもしれないが、「実感なき経済成長」ということばに表されるように、現実には、わずかばかりの付加価値の伸びは、賃金に優先して企業利益に配分され、賃金の伸び悩みは若年層にしわ寄せられる。

資本市場がグローバル化している以上、一定の企業利益を確保しなければならないプレッシャーが企業経営者にかかることは仕方ない。企業利益が高くなれば、高齢富裕層は投資所得を稼ぐが、この所得は消費に振り向けられることなく、貯蓄として蓄積し、消費不足から生じるしわ寄せを若年層が受けるという循環が生じる。一定の経済的地位にある中高年層の雇用・賃金がデフレにおいても比較的安定している一方で、若年層を中心とした経済的弱者の賃金が下落したり非正規雇用が増加しているところに問題の奥深さがある。
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こうした状況を背景として生じる世代間・世代内格差を解消するにはどうしたらいいだろうか?

本来このような社会格差問題は、市場の自浄作用を通じて解消されるべきである。生産効率の高くない中高年層のサラリーマンが多くいる会社は、競争力を失い市場から淘汰される、と経済学は説明するだろうが、現実には大企業の営業権、交渉における優位な立場、など、市場での地位・組織における地位が確立してしまえば、市場原理が必ずしも働くとは限らない。市場が十分に機能しないことが理由で生じている問題であれば、一口にデフレといっても金融緩和で解決できるとは限らない。

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