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第十一回目 富裕層の増税 番外編(その1)

家計金融資産が1,510兆円について

連載「富裕層の増税」を読んだ読者から、「8,000万円以上の投資可能資産を所有する日本人が182万人もいることにビックリしましたが、8,000万円以上の投資可能資産を所有する日本人の金融資産の合計は、8,000万円に182万人を乗じるという単純計算によると145兆円です。この数値を見て疑問がわきました。日本人全体が持つ金融資産は1,400兆円と聞いています。残り1,000兆円以上の金融資産は、少数の大金持ちが持っているのですか?」という質問がありました。確かに、多くの人が抱く疑問ではないかと推測します。今回は、日本人全体が持つ金融資産(家計金融資産)に焦点を当てます。
家計金融資産の数値は、日本銀行が四半期毎に発表する「資金循環勘定」に記載されています。2012年9月末(速報)によれば、家計金融資産は1,400兆円ではなく、なんと1,510兆円です。その内訳は、次のとおりです。
現金・預金    ?840兆円
債券     ?    33
投資信託?      58
株式・出資金?    87
保険・年金準備金?426
その他?        66  
合計?       1,510兆円

資金循環統計における家計金融資産の推計に当たって使用しているデータは、銀行とか保険会社の決算書等の数値です。そのように公表されている計数が大半を占めることから、誤差はせいぜい数十兆円に止まるものと思われます。その意味では、家計金融資産残高1,510兆円という値は、かなり確度の高い数字であると考えられます。

直近の国勢調査(2010年)によると総世帯数は、5,195万世帯です。家計金融資産が1,510兆円であるなら、世帯当たり家計金融資産は、約2,900万円(1,510兆円÷5,195万世帯)になることになります。本当にそんなに沢山あるのでしょうか。答えはYESでもありNOでもあると考えます。

前述しました家計金融資産の算定の精度からかんがえるとYESであり、庶民感覚からするとNOとなります。庶民感覚からのズレは、二つの面から発生しています。ひとつは、日銀が使用している家計金融資産の内訳が庶民感覚からズレること。もうひとつは、何気なく使っている平均値が庶民感覚からズレる結果をもたらすことです。

日銀の家計金融資産には、生命保険や企業年金・国民年金基金等に関わる掛け金、個人事業主(個人企業)の事業性資産などが含まれています。これらは、通常個人が必ずしも金融資産とは認識しないものです。銀行預金を以て家計金融資産の全てと考える庶民感覚からすれば、ズレる結果をもたらします。

次に平均値について触れます。中学・高校での数学において、正規分布する母集団から導かれる平均値は有意であると習いました。しかし、我々の住む社会は、正規分布する母集団ではありません。数少ない金持ちと数多くの普通の人々が居るのが現実の社会です。次の例が参考になると思います。
?家計金融資産
金持ちAさん世帯?     1億円
普通の人Bさん世帯 ? 530万円
普通の人Cさん世帯  ?500万円
普通の人Dさん世帯?  490万円
普通の人Eさん世帯  ?480万円
合計?        1億2,000万円

上記データから世帯当たり家計金融資産の平均値を計算すると2,400万円(1億2,000万円÷5世帯)になります。しかし、2,400万円は、現実離れした数値です。非正規分布の母集団に平均値を使用することが間違いです。このような場合、中央値が解決の糸口を与えてくれます。中央値とは、世帯を金融資産残高の低い順から並べた時、すべての世帯の中央に位置する世帯の金融資産残高を言います。上記例では、上から3番目の普通の人Cさん世帯がすべての世帯の中央に位置する世帯ですので、その値は、500万円になります。2,400万円でなく500万円が世帯当たり家計金融資産の推定値であれば、庶民感覚に合う数値となります。

以上の分析から推定できることは、家計金融資産1,510兆円の平均世帯当たり家計金融資産約2,900万円は、必ずしも正しくありません。世帯当たり家計金融資産の中央値を利用すると、1世帯あたり家計金融資産は、2,000万円とか1,500万円になるような気がします。

本記事で述べた分析により家計金融資産の全体像はご理解いただけるものと思います。しかし、「1,000兆円以上の金融資産は、少数の大金持ちが持っているのですか?」の質問に回答するには至っていません。更なる分析を続けます。

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