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第八回 世代間格差

本連載では国民の厚生水準は「いくら稼いだか」ではなく「どれだけ消費をしたか」で測るべきであり、できるだけたくさんの消費をできるようにするために必要な政策を立案すべきであると述べてきた。
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年金受給について、現在の高齢世代は負担に比べて受給の方が多くなっているが、現役世代は負担した分の受給すらできないかもしれないということが危惧されており、これを年金の世代間格差と呼んでいる。年金支給を削減し、高齢世代も負担する消費税を増税することで、この世代間格差を解消すべきことが提案されている。また、国債を発行して社会保障給付費を賄うことは、「将来世代の財布に手を入れる」と表現され、世代間格差の原因になっているといわれる。恐らく高齢世代の税負担と現役世代或いは将来世代の税負担の大きさが違う、国債の返済をしなければならない将来世代は税負担が高くなる、ということを言っているのだろうが、本当に世代間格差というものがあるのだろうか?この問題について、税負担の高低ではなく、各世代の消費量に着目して検討してみる。

例えば、消費には衣食住と娯楽があるとしよう。もちろん他にもたくさん消費の対象はあるだろうが、当座の議論のためにこの4つが消費できれば、国民の厚生水準を高く保つことができるとし、現役世代は国債を発行することで税負担が軽減された結果、この4つの消費をできているとしよう。この時、将来世代が現役世代より大きな税金を負担させられたために、娯楽を消費できなくなったとすれば、将来世代は割りを食っていることになる。しかし、税負担が大きくなっても、消費財を供給する能力が低くならなければ、現役世代と同量の消費はできるはずである。

あるいは、将来世代が社会保障給付費を負担するためにより大きな税負担をしなければならなかったとしよう。社会保障サービスを供給しなければならなくなった結果、娯楽を供給する能力がなくなったために、将来世代は娯楽の消費をすることができなくなったということであれば、確かに現役世代の方がより多くの消費をすることができたということであり、世代間で格差があったということになるが、これは税負担を世代間でどう割り振るかというような政策で是正できる問題ではなく、少子高齢という事実に起因しているので、少ない人口でより多くを生産できるようにするために、生産性を高めなければならないという経済の実体の問題として解決しなければならない話である。

現実的には、潜在的生産力はあるけれど、その潜在的生産力が十分に活用されていない状況、すなわち、非自発的失業がある状況であり、先の例でいえば、潜在的には社会保障サービスを供給し、更に娯楽も供給できる生産力がある状況だろう。高齢層に支給される年金が消費に向かえば、それは現役世代の所得になる。年金給付を削減すれば、一見世代間格差は解消するように思えるかもしれないが、その実、高齢層の年金所得に起因する現役世代の所得が低くなり、全体の所得・消費水準は低くなってしまうかもしれない。

世代間格差の問題は、どの世代がどれだけ税負担をすべきという観点ではなく、それぞれの世代でいかに有休資源を生じさせないようにすべきという観点から検討することで解決すべき問題である。

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