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第三回 株の儲けはゼロサムか?

デリバティブ取引から生じる利益は、必ず同じ額の損をしている相手方がいる。このような取引をゼロサムという。国債の価格は金利水準が上がれば下がり、金利水準が下がれば上がる。国債の売買で儲かる人もいれば損をする人もいるだろうが、国債が満期に額面で償還されれば、全体の損得はゼロになる。国債の売買もゼロサムである。では、株の儲けもゼロサムだろうか?
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国債やデリバティブの場合と違って、株価が上がっていけば誰も損をする人はいない。IPOをすれば一攫千金も夢ではないが、誰かの損を犠牲にしているわけではない。その意味では株取引はゼロサムではないという見方もある。株価が上がる=企業価値が高くなるということは、その企業の営業権の価値が高くなるということであり、営業権という資産が創造された結果として、株取引の利益が生じているとみれば、国債やデリバティブ取引とは一線を画するということになるのかもしれない。
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その一方で、株価がいくら上がってもそのこと自体に本源的な価値があるわけではなく、ビルが建つのと同じような厚生水準の向上はないことを鑑みると、マクロ経済的には、株の儲けはやはりゼロサムという考え方もある。
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どちらの考え方がいいかはさておき、株の儲けが触媒になって経済取引が生じれば、それは確実にゼロサムではないということである。株で儲けた人が別荘を買う、別荘を建てた人はその儲けでレジャーに興じる、レジャーを企画した旅行会社はその儲けで車を買う…。この触媒の機能こそ金融の役割であり、経済活性化のために必要な機能である。国民経済は分業(生産)と交換(消費)を通じてその厚生水準を高めることが本旨であり、この取引を惹起するための触媒をどう作るかというところに政策の本質がある。

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