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第八回目 日本の富裕層に対する増税(その3)

社会保障・税一体改革大綱において、課税所得5,000万円超について45%の税率を2015年から新たに設け、適用するという政府案が提案されています。それでは、課税所得5,000万円以上の富裕層は何人ぐらいいるのでしょう!所得税対象の納税者数は約4,850万人です。納税者の10%の485万人が課税所得5,000万円以上の富裕層でしょうか?あるいは1%の48.5万人でしょうか?実は、約1万4千人です。つまり納税者約3,500人の中の1人が課税所得5,000万円以上の富裕層です。

次に、課税所得5,000万円以上の富裕層の平均課税所得を検討してみます。2010年申告所得税での課税所得5,000万円超1億円以下の納税者の平均課税所得は6,430万円で、同課税所得1億円超の納税者の平均課税所得は2億1,947万円でした。この数値は、年末調整で税務計算の終わる納税者を含んでいません。しかし、統計的数値から判ることは、日本には統計上の数値を押し上げるようなスーパーリッチが居ないことを物語っています。

増税効果を推定します。課税所得5,000万円以上の富裕層の平均課税所得金額を仮に1億円とした場合、富裕層(1万4千人)の課税所得の総額は1兆4,000億円です。しかし、これら富裕層の増税効果は、700億円に過ぎません。その計算は以下のとおりです。
増税効果(700億円)=課税所得総額(1兆4,000億円)×増税分(45%?40%)

2012年の予算ベースでの所得税額は11.4兆円です。鳴り物入りで富裕層に対する増税をしても、増税効果が700億円であれば、歳入に与える影響は微たるものです。消費増税と比較してみると一目瞭然です。現行の消費税5%の税率が2014年4月に8%に、15年10月には10%に上がる予定です。計算上は、10兆円余りの消費税税収が消費税率10%になった時点で倍の20兆円になるはずです。つまり、10兆円の増税効果があります。増税の持つ効果を考えると富裕層に対する増税はあまり意味がないです。意味はないかもしれませんが、富裕層に対する増税は政治家がその気になれば、案外容易く導入できると考えます。金持ち叩きの施策は、マスコミ受けするし、多くの大衆は金持ちいじめに拍手を送るからです。

しかし、自民党政権の下、富裕層に対する増税が導入されるかについて先行きが見えない状態になりました。財政再建のための選択肢は、増税・歳出削減か、経済の成長かのいずれかです。しかし、増税・歳出削減と成長は相いれないものです。増税すれば消費が減り、消費が減れば、景気が悪くなるという図式が成り立ちます。財政と成長の両立は非常に難しい道です。富裕層に対する増税は、安倍首相が考える経済成長重視路線とは相いれないと考えます。

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