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移転価格税制(8)

〔利益水準指標の問題〕
 第7回でPS法において合算利益を分割する指標として何を用いるべきかという問題があることを指摘した。ここで再度PS法の計算を考えてみる。第7回の利益分割例では、A社に帰属すべき利益を次の式の左辺のように計算した。


 これは右辺のように変形できる。右辺における分数は、A社B社を通じた販管費を指標(分母)とした利益率(すなわち、グループの内部利益率)を示している。

 つまり、PS法において利益分割指標として何を用いるかという問題は、何を指標とした内部利益率を用いるべきかという問題と同義であることが分かる。一方、TNMMを輸入側に適用する場合には、比較対象取引の営業利益/売上高を利益水準指標として用いる。この指標は非関連者との取引におけるものであるから、外部利益率といえるが、利益率の指標(分母)として必ず売上高が用いられなければならない理由はない。換言すれば、PS法とTNMMは前者が内部利益率を用いるのに対して後者は外部利益率を用いるという点は異なるが、何を分母とした利益水準指標を用いるかということは共通する問題なのである。

 RP法の売上総利益率にせよ、TNMMの営業利益率にせよ、売上高を分母とした利益率を用いるということは、利益率が一定であれば、売上高が大きくなるほど課税所得が増加する(国家の側からは課税権が主張できる)ことを意味する。しかし、同じ企業規模でも直販/卸売り割合により売上高は大幅に異なることに加え、関連者間においては委託販売や商流を変えることにより売上を計上する者を容易に変更し得る。このように、売上高を用いた利益水準指標は、移転価格課税目的上は必ずしも適当な指標とはいえないと考える。

 では、どのような指標が良いのか。この問題はOECDでも議論されているが結論は出ていない。いずれにせよ、商流や契約形態の違いにより簡単に移転できるものは適当とはいえない。移転価格課税の問題は、国家の課税権の問題であるから、課税権を主張するに相応しい企業の実体を示す指標が望ましいと考える。私見であるが、人や生産設備の存在を示す指標が望ましいと考える。しかし、売上高を分母とする利益率を使用せざる得ないのであれば、比較対象取引として採用しようとする取引が、企業の活動や存在を示す指標の観点から比較可能性があるかどうか(例えば人件費や償却費等の売上高に対する比率が検討対象取引と同等か)という点が検討されるべきではないかと考える。

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