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移転価格税制に何が起きている?! 第4回目【完】

第4回
移転価格算定方法の妥当性
  武田薬品の移転価格課税は、武田薬品とTAP社間の利益配分において、武田薬品に対して過少に配分されているとの国税の判断がベースになっている。このことは、国税が採用した移転価格算定方法は、利益分割法であることを示唆している。
  海外の利益の多寡に応じて税収を上げるという強引な課税を推進する場合、租税特別措置法66条の4?に定める方法に従うことは、非常に難しい。
措法66条の4?に定める方法では、独立企業間価格はまず、「基本三法という伝統的な取引基準法」で検討され、それが適用できない場合、はじめて「その他の方法」で検討することとなっている。
  伝統的な取引基準法
 ・独立価格比準法(CUP法):同種製品の独立企業間の取引価格を検討
 ・再販売価格基準法(RP法):米国の比較可能な同業の財務データに基づいて販売会社がどの程度の売上利益率を計上しているかを検討
 ・原価基準法(CP法):日本の比較可能な同業の財務データに基づいて製造原価に対してどの程度利益の上乗せをしているかを検討
  その他の方法
 ・利益分割法(PS法)
 ・取引単位営業利益法


  筆者の知る限り、2006年前後に行われた移転価格課税は、ほとんど残余利益分割法であった。そして、求められる手順を捨象して移転価格算定方法として残余利益分割法が採用されていた。
  2011年11月に日米課税当局間の相互協議が合意に至らず終了したもうひとつの理由は、国税の採用した移転価格算定方法が違法であるとIRSが解したことにあると推測する。

まとめ
  アドビ事件を例にとる。裁判所は、アドビ事件において国税が採用した算定方法を用いて独立企業間価格を算定した過程には違法があり、結局、措法66条の4?に規定する国外関連取引につき「当該法人が当該国外関連者から支払を受ける対価の額が独立企業間価格に満たない」との要件を認めることはできないことになるから、(国税が採用した算定方法による)独立企業間価格を用いた本件各更正は違法であり、これを前提とする本件各賦課決定も違法であると判断をくだしている。

  アドビ事件は、移転価格訴訟において重要な判例である。この判例から、武田薬品の移転価格課税を検討すると、国外関連者の判定の過程に違法があり、これを前提とする武田薬品に対する賦課決定も違法となるとの判断が裁判所から下されると推測する。もし、本件が訴訟に持ち込まれた場合、国税が負ける可能性が高い。

 最後に、野田総理が政治生命を賭けているという消費増税が先送りされたら、国税は、「税に政治的思惑の入り込む余地はない」と説明するであろうが、歳入確保のため、再び、移転価格課税ラッシュ、あるいは理不尽な課税ラッシュがおとずれるのではないかと危惧する。

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