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移転価格税制に何が起きている?! 第3回目→読者からコメントあり

第3回
国外関連者の範囲
 TAP社は50%以上(つまり、50%を含む)武田薬品に所有されているから、本邦移転価格税制上、国外関連者に該当するとする国税サイドの議論と、TAP社は50対50でアボット社と武田薬品が出資した会社であるから国外関連者に該当しないとする米国の税務当局(IRS)サイドの議論とがかみ合わなかったと想像できる。


  米国の移転価格税制の下での国外関連者の定義は、「同一の支配下にある事業、団体、法人等」とあるのみで具体的な規定はなく、一般に法人間の取引であれば、50%超の持分関係(つまり、50%を含まない)にある2法人との解釈が用いられている。更に、TAP社との取引をめぐっては、2005年武田薬品はアボット社から「取引価格を高くして、不当に高い利益を得ている」として、損害賠償を求めて提訴されているという事実から考えると、TAP社は、米国の基準に従えば国外関連者ではないことは明確である。2011年11月に日米課税当局間の相互協議が合意に至らず終了した理由のひとつが、TAP社の取扱いに合意が見られなかったことにあると推測する。
  本邦の移転価格税制の事務運営指針を注意深く検討すると、やはり、TAP社は国外関連者に該当しないと言えるのではないかと考える。事務運営指針2-2(3)ロを引用する。
【法人又は国外関連者が複数の者の共同出資により設立されたものである場合には、その出資者など国外関連取引の当事者以外の者が当該国外関連取引に係る取引条件等の交渉の当事者となる場合があること。また、当該交渉において独立企業原則を考慮した交渉が行われる場合があること
(注) 国外関連取引に係る対価の額が厳しい価格交渉によって決定されたという事実、国外関連取引の当事者以外の者が当該国外関連取引に係る取引条件等の交渉の当事者となっている事実又は国外関連取引に係る契約の当事者に法人及び国外関連者以外の者が含まれているという事実のみでは、当該国外関連取引が非関連者間取引と同様の条件で行われた根拠とはならないことに留意する。】
事務運営指針2-2(3)ロの条文解釈は、(1)共同出資により設立された法人との取引で、(2)その出資者と厳しい価格交渉があり、(3)そして決定した価格が、独立企業間価格で算定されていれば、当該ジョイントベンチャーを国外関連者として取り扱う必要はないと解する。

TAP社の場合、以下のように判定される。
(1)共同出資により設立された法人との取引である。
(2)その出資者と厳しい価格交渉があった。
(3)決定した価格は独立企業間価格であったと推定された。

 国税は、上記(3)の独立企業間価格であったという点を否定して課税したのであるが、国税が採用した移転価格算定方法に問題があったため、相互協議において、上記(3)の取扱いに関してIRSサイドの同意を得ることが出来なかったと推測する。国税の採用した移転価格算定方法について検討する。-次号に続くー

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