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移転価格税制に何が起きている?! 第2回目

第2回
武田薬品の移転価格課税の問題点
  前号で引用した武田薬品のプレスリリース(2006.6.28)から窺い知ることが出来る問題点は、以下の3点である。
● 米国市場から得られる利益に課税したこと。
● 当該取引価格は、米国における合弁パートナー(50%所有)たる第三者の同意なしには決定し得なかったものであること。
● 武田薬品とTAP社間の利益配分において、武田薬品に対して過少に配分されているとの判断を国税が下したこと。

  上記の問題点の内、(1)米国市場から得られる利益に課税したこと、(2)取引価格は、50%所有する合弁パートナーとの同意が必要であることについて、興味ある記事が【月刊テーミス「税金申告漏れ続出の内幕武田薬品狙い撃ちは大阪国税局の焦り」】(2006.8)にあったので一部抜粋する。
【今回の武田薬品の例を、1998年に同じ移転価格税制を適用され、当時は同制度下で過去最高の課税額となった大手製薬会社の旧・山之内製薬(現・アステラス製薬)と比べてみると分かりやすい。
 旧山之内は、アイルランドの子会社との取引をめぐり、1997年3月期までの6年間に約541億円の申告漏れを指摘された。この際に問題になったのは、日本の法人税率が当時37・5%だったのに対し、アイルランドはさまざまな優遇措置を設けているため、日本より大幅に低い10%となっていることだった。
 旧山之内は「ガスター10」の商品名で一般に売られている、主力商品の胃潰瘍治療薬「ファモチジン」の製造・販売の権利を子会社の「山之内アイルランド」に与え、その際にロイヤリティー(特許使用料)を受け取っていたが、その額を不当に安くすることで、本来は同社が日本で申告すべき所得を、子会社に移したと認定されたわけだ。子会社が米国ならば問題にならない。
 次に疑問になるのは、旧山之内のケースが100%出資の子会社だったのに対し、武田薬品では合弁会社と50対50で出資した会社である点だ。
 旧山之内は「山之内アイルランド」に対するロイヤリティーが不当に低いとして課税されたわけだが、この際に争点となるのが「独立企業間価格」というもの。例えば、A社がB社に物や権利を売ろうとする場合、A社は最大の利益を得るための取引価格を設定するはずだが、B社側に所得を移転しようと考えた場合には、それを安くすることになる。移転価格税制は、後者を許さないための制度のため、国税当局は独立企業間価格で取引したかどうかを厳しく調査する。
 旧山之内が「山之内アイルランド」へのロイヤリティーが低いと判断されたのは、国税当局が他の関係のない企業とのロイヤリティーと比較して、そう結論付けたといえる。
 ところが、武田薬品に関して「取引価格が不当に低い」とした国税当局の判断は不可解だ。前述のとおり、TAP社は50対50で出資した会社だ。そのため、「TAP社に所得を移転すれば、パートナー企業のアボット社に半分持っていかれることになる」(武田薬品幹部)のだ。しかも、武田薬品にはTAP社に対する価格の支配権はない。
「取引価格を抑えて合弁会社の利益を大きくしても、利益の半分は持っていかれる。経済行為としてあり得ない」
 TAP社との取引をめぐっては2005年、武田薬品はアボット社から「取引価格を高くして、不当に高い利益を得ている」として、損害賠償を求めて提訴されているのだ。これでは「意図的に安い価格に抑えた」とする国税当局の判断とは逆になってしまう。】

   武田薬品の異議申立を国税が認めざるを得ない状況について、移転価格税制の観点から更に検討する。 -次号に続くー

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