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移転価格税制に何が起きている?! 第1回目

第1回
はじめに
武田薬品の移転価格課税の経緯を時系列的に述べる。
 2006年6月に、大阪国税局より武田薬品と米国ジョイントベンチャー(資本関係の無い米国法人が50%所有)との2000年3月期から2005年3月期の6年間の取引に対して移転価格税制に基づく更正処分がなされた。直ちに異議申立を行った。(下記①参照)
 2008年7月に、移転価格税制に基づく更正処分による二重課税の解消を目的として相互協議を申請した。そこで異議申立を一旦中断した。(下記②参照)
 2011年11月に、相互協議が合意に至らず、不成立となる。一旦中断していた異議申立を再開する。(下記③参照)
 2012年4月に、大阪国税局より異議申立が認められた。(下記④参照)

移転価格税制に基づく更正処分は次の通りである 。
武田薬品と米国アボット社との50:50の合弁会社であるTAPファーマシューティカル・プロダクツ株式会社(以下「TAP社」)との間の2000年3月期から2005年3月期の6年間の製品供給取引等に関して、米国市場から得られる利益が、武田薬品とTAP社間の利益配分において、武田薬品に対して過少に配分されているとの判断により、大阪国税局は、6年間で1,223億円の所得金額を更正した。追徴税額は地方税等を含め、合計約570億円となった。
武田薬品は、下記の理由から1,223億円の所得更正金額の妥当性を否定した。
 武田薬品には、TAP社に所得を移転する意図、動機が全く存在しないこと
 当該取引価格は、米国における合弁パートナーたる第三者の同意なしには決定し得なかったもので、その実質において独立企業間価格であり、移転価格税制が適用されるべきものではないこと
 武田薬品およびTAP社間の利益配分は適正であり、当局が算定した武田薬品およびTAP社間の利益配分額は、合理的とは考えられないこと
武田薬品は、直ちに異議申立を申請した。

武田薬品が移転価格課税された年度の状況
武田薬品が移転価格課税された年度は、移転価格税制に基づく更正が続出した年である。下記は、当時の代表的移転価格課税案件(単位百万円)である。

年月

会社名

更生所得額

更生税額

対象取引

管轄国税局

20066

武田薬品工業

122,300

57,000

医薬品

大阪国税局

20056

TDK

21,300

12,000

電子部品等

東京国税局

20056

ソニー

21,400

4,500

ロイヤリティ

東京国税局

20055

日本金銭機械

3,400

1,600

紙幣識別機

大阪国税局

20053

京セラ

24,300

13,000

電子部品等

大阪国税局

このような移転価格税制に基づく更正ラッシュは、儲かっている企業から出来るだけ多くの税を徴収しようという意図が国税にあったのではないかと推測される。その理由は、上場企業の2006年3月期決算は、3年連続で過去最高の利益を確保しているが、その利益の多寡に応じて税収は上がらなかったからである。上場企業の好決算は、海外事業の好調ゆえに達成された場合が多い。国税は、巨額な海外利益に着目した。しかし、当時の法人税法の下では、海外の利益は日本に送金されない限り課税できないというジレンマがあった。送金されていない利益に課税する術は、移転価格税制に基づく課税である。
 海外の利益の多寡に応じて税収を上げるという意図は、必然的に国税当局による強引な課税がされるようになる。
武田薬品の異議申立を、今回、国税が認めたことは、海外の利益の多寡に応じて税収を上げるという強引な課税が是正されたと考える。
武田薬品の異議申立を国税が認めざるを得ない状況について検討する。-次号に続くー

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