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滞納処分を点検(7)

 滞納処分とは滞納国税を強制的に徴収するための一連の手続きである。税務行政当局は裁判所の関与なしにこれを行う権限を与えられている。その手続きについては国税徴収法に定められている。

 滞納国税は原則として、すべての公課(雇用・国民保険料など)、私債権(銀行や消費者金融からの借入金など)に優先して徴収される。

 国税が滞納となった場合、通常、その納期限後50日以内に督促状により納付の督促が行われる。督促にもかかわらず税金が完納されない場合に滞納処分が開始される。

 まず、滞納処分の対象となるものについて、「財産調査」が行われる。次に、督促後10日を経過しても税金が完納されない場合、その財産の処分を禁止するために「財産差し押さえ」が行われる。

 差し押さえ後にも税金が完納されないときは、差し押さえ財産の強制的な売却である「換価」が行われる。その代金は、滞納国税などの債権に「配当」される。滞納者に一定の事情がある場合には「換価猶予」の措置がある。

 滞納処分の対象となる財産がないときや納税者の生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき、その執行は「停止」される。停止が3年間継続すると納税義務は消滅する。

 換価猶予や停止の要件は国税徴収法(151)に規定があるが、判断基準は税務行政当局内の通達で定められている(151条関連通達)。当該通達第7項は次のように述べている「換価の猶予は滞納者の申請に基づかないで、税務署長が職権をもって換価の猶予をすることができることをいう。したがって、滞納者は、換価の猶予を受けないことについて、不服申立て又は訴えの提起をすることができない」。この通達から判るように税務署長に大きな裁量の余地が与えられている。そして、税務署長は、猶予を求める納税者の過去の税金の支払い実績をみて換価の猶予を認めるか否かの判断をするであろう。国権の権限の乱用を制限するためには、通達でなく国税徴収法等で換価猶予や停止の要件を詳らかすべきである。  

納税者は差し押さえの前に督促に欠陥があることを理由として一定期間内に税務署長などに異議申し立てができるが、弁明の機会は与えられていない。一方、米国では、滞納者は税務行政当局の苦情処理機関において弁明できる。

 滞納処分は税務行政当局の強力な自力執行権である上にその裁量の余地が大きい。善意の滞納者の生活の維持、事業継続の権利を保護するためには、わが国でも差し押さえ・換価の前に納税者と税務行政当局との協議の場を設けるなどの規定が必要であろう。

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