千倉書房 連載ブログ

千倉書房 連載用ブログ


海外への本社移転の検討 (7)

本社機能の海外移転と相続税・贈与税(その1)

 相続税対策の文脈として本社機能を海外に移そうという話が持ち上がることもあると思います。すなわち、日本企業のオーナー株主が将来の相続の場面を想定して、海外に持ち株会社を設立して当該日本企業はその海外持ち株会社の子会社とし、当該オーナー株主はその海外持ち株会社の株主となることを構想することが考えられます。この場面において、当該オーナー株主の相続人になる者が海外に移住していれば、将来の相続に際して日本で相続税が課されない場合があります。当該オーナー株主が生存中に自分の相続人になる者に上記海外持ち株会社の株式を贈与した場合には相続税ではなく贈与税が問題になりますが、相続税同様に贈与税が課されない場合があります。今回は、どのような場合に相続税や贈与税が課されないのかについて細部を検討したいと思います。
 検討すべき条文は、相続税法第1条の3(相続税)と第1条の4(贈与税)です。いずれもそれぞれの税の納税義務者を定めるものです。まずはその条文を眺めてみます。
/////////////////////////////////////////////////////////
第一条の三  次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある。
一  相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下同じ。)により財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの
二  相続又は遺贈により財産を取得した日本国籍を有する個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの(当該個人又は当該相続若しくは遺贈に係る被相続人(遺贈をした者を含む。以下同じ。)が当該相続又は遺贈に係る相続の開始前五年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたことがある場合に限る。)
三  相続又は遺贈によりこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの(前号に掲げる者を除く。)
四  贈与(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を除く。以下同じ。)により第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産を取得した個人(前三号に掲げる者を除く。)

第一条の四  次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、贈与税を納める義務がある。
一  贈与により財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの
二  贈与により財産を取得した日本国籍を有する個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの(当該個人又は当該贈与をした者が当該贈与前五年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたことがある場合に限る。)
三  贈与によりこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの(前号に掲げる者を除く。)
/////////////////////////////////////////////////////////
 上記の条文を踏まえると、海外持ち株会社株式について相続税や贈与税が課されない場合とは、相続や贈与により財産を取得する者が日本人という前提で考えると、当該財産を取得する者のみならず被相続人や贈与する者も過去5年超、日本に住所を持ったことがないという場合に限られることになります。すなわち、もし相続税対策の文脈において海外への本社機能移転を考えるならば、オーナー株主としては自分の相続人となる者と共に海外に完全に移住する覚悟が必要ということになりそうです。中途半端に海外に移住して日本にもある程度滞在するようなライフスタイルであると、武富士のケースのように税務当局から日本での居住者と認定されて結局、相続税や贈与税を課されるという展開もありえます。次回は参考として武富士のケースを整理してみます。

コメントをどうぞ

コメントを投稿するにはログインしてください。