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海外への本社移転の検討 (6)

本社機能を海外に移すことと、親会社を海外に置くこと

 本社機能の海外移転というと持ち株会社を海外に置く話と考えている方が多いようです。しかし、本社機能を海外に置くことと、親会社を海外に置くことは必ずしも結びつきません。子会社が本社機能を持っていたってよいはずです。例えば、日本企業がシンガポールに子会社を作って、本社機能をシンガポール子会社に移すことも十分に考えられます。特に日本の上場会社にとっては、親会社を海外に設けたり、全事業の本社機能を海外に移したりすることは上場ステータスとの関係で極めてハードルが高いでしょうから、展開する複数の事業のうち一部の事業だけの本社機能をシンガポール子会社に移すというのは現実的なシナリオかと思います。

海外に親会社を置く理由

 なぜ、本社機能の海外移転というと、親会社としての持ち株会社も海外に置くような話になるのでしょうか?
 それは、本社機能を有する海外の会社が、資本関係においても親会社という構造をとったほうが税務上有利な側面があるからと思われます。すなわち、全体としての税務コストを下げるためには世界最高税率である日本での法人税課税を可能な限り避けたいところですが、親会社が日本にあると日本で課税される可能性を払拭できないからです。具体的に言いますと、日本にある親会社に配当すれば日本での課税が発生しますし、あるいは日本にある親会社に配当しないにしてもタックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制とも呼ばれる。租税特別措置法66条の6以下)の適用により、海外子会社の所得が日本にある親会社の所得に合算されて日本で課税されてしまうことも考えられます。

 この点、配当すると日本で課税が発生するという点については、最近の税制改正(平成21年度税制改正)により海外子会社からの受取配当のうち95%を益金に算入しないことになったことから、企業にとっては大きな問題ではなくなったように思われます。

 しかし、上記タックスヘイブン対策税制が適用されるリスクというのは依然として大きい問題ですので、このリスクへの対策の一つとして、親会社を海外に置いてそこに本社機能を置くという考え方にも合理性があると思います。

 なお、タックスヘイブン対策税制への対応としては、その考え方に限られるものではありません。そもそも同税制の対象にならないような税率(20%超)の国に子会社を設けたり、あるいは同税制の適用除外に該当するように仕組むという方向性もあります。むしろそのような方向性の中で同税制に対応する方が一般的ではないかと思います。

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