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海外への本社移転の検討 (5)

「海外への本社移転と移転価格税制」
 日本企業が海外に本社移転を検討する際に留意すべき税制は、移転価格税制です。移転価格税制とは、日本企業とその海外のグループ会社との間の取引に関して、取引価格が独立企業間価格(グループ関係にない独立した第三者との取引であれば付されたであろう価格のこと)と異なる場合に、独立企業間価格で当該取引がなされたものとして課税所得が算定される制度です。条文で言いますと、租税特別措置法66条の4です。
 何故、この移転価格税制が日本企業に寄る海外への本社移転に関係するかといいますと、本社機能の海外移転は、当該日本企業にとって必ず海外のグループ会社との取引を伴うからです。この点、移転価格税制が適用される場面として二つの時点が考えられます。すなわち、本社機能を海外に移転する時点と、もう一つは、本社機能を海外に移転した後の時点です。

本社機能を海外に移転する時点

 まず、本社機能を海外に移転する時点を考えてみてください。その際に、何らかの有形資産が移転していれば、移転価格税制により、当該移転が独立企業間価格でなされたものとして日本企業の課税所得が算定されることがありえます。また、有形資産の移転はないものの、ノウハウなど何かしらの無形資産が海外のグループ会社に移転したものと観念できる場合には、同様に移転価格税制が適用されて日本企業に課税される場面がありえます。この点、移転価格税制が適用される無形資産の範囲は条文上不明確ですので、税務当局が同税制を広く適用するおそれがあります。すなわち、移転価格税制の適用対象となる無形資産の定義は法令上明確に規定されておらず、通達にて「著作権、基本通達20?1?21に定める工業所有権等のほか、顧客リスト、販売網等の重要な価値のあるもの」と規定されています(措置法通達(法人税)66条4(3)?3注1参照)。
 
本社機能を海外に移転した後

 次に、本社機能を移転した後の状況を考えます。その場面でも移転価格税制の適用の余地があります。すなわち、本社機能が海外のグループ会社に移転した後においても、当該海外のグループ会社と日本企業との間で何らかの取引関係が続いている限り、移転価格税制の適用により、当該取引が独立企業間価格でなされたものとして課税所得が算定される場面が想定されます。

 本社機能の海外移転は、これまで日本企業に帰属してきた所得の一部が今後は海外に移った本社に帰属することを意味することから、これを看過できない日本の税務当局としては積極的に移転価格税制の適用を考えることが予想されます。

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