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海外への本社移転の検討 (4)

「三角合併とコーポレートインバージョン対策税制」

 海外への本社移転の手法として三角合併を用いる場合には、「コーポレートインバージョン対策税制」の存在に留意する必要があります。同税制は、会社法改正で三角合併が可能になったことを受けて平成19年度税制改正で導入されたものです。

 同税制の適用を受けると、主に二つのデメリットがあります。

(1)?適格合併の否認

? 一つ目は、適格合併としては扱われないことです。条文でいうと租税特別措置法68条の2の3です。適格合併として扱われないと、対象会社(ここでの文脈においては海外への本社移転を目論んでいる日本企業自身)の資産の含み益に課税されます。また、当該対象会社の株主において株式の譲渡益に課税され、みなし配当課税も受けることになります。

(2) タックスヘイブン対策税制類似の所得合算制度

??二つ目のデメリットは、海外の親会社の所得について、株主自身の所得に合算されてしまうというタックスヘイブン対策税制に類似する結果になることです。具体的には、対象会社の株式のうち80%以上が5つ以下の株主グループによって保有されているケースで、その後の三角合併の結果、タックスヘイブン対策税制の対象になるような低税率国(現行法では租税負担割合が20%以下の国)の親会社が当該対象会社の株式の80%以上を保有するに至った場合、当該親会社に留保された所得は、日本にいる各株主の所得として合算されることになります。条文でいうと租税特別措置法66条の9の2です。

コーポレートインバージョン対策税制の弱点

 ただし、日本企業による海外への本社移転という文脈においては、現行のコーポレートインバージョン対策税制はそれほど障壁になるような存在ではないと思われます。その理由は、まずは前回述べましたとおり、そもそも三角合併という手法は現実的にとりにくいことが挙げられます。また同税制の対象となるのは、5つ以下の株主グループによって80%以上を保有される会社ですので、現実的には、上場会社は除かれることになります。逆にいいますと、同税制が問題になる場面とは、上場会社ではなくて同族会社のような少数の株主グループに保有された会社が三角合併の手法を使って海外への本社移転を考えるような限定的な場面と言えます。
? なお、前に述べましたように、海外への本社移転は三角合併の手法を選択するよりは、むしろ企業としての様々な機能の全部もしくは一部をシンガポールなどの低税率国にある海外子会社に移転する方法が現実的ではないかという考えに基づいています。

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