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海外への本社移転の検討 (2)

「海外への本社移転の方法」
? 日本企業が海外に本社を移転したいと考えたとき、その方法としてはどのようなものがあるのでしょうか?

資産譲渡による方法

? 最も現実的な方法として、本社機能に必要な資産を本社となるべき海外子会社に移転する方法があります。いきなり本社機能を全て海外に移すことはできないと考える企業にとっても、この方法であれば、時間をかけて段階的に本社機能を海外に移していくプランをたてることが可能です。例えば、いくつか営んでいる事業のうちその一つについてのみ、その本部機能をシンガポールなどの子会社に移すということもできます。特に上場会社であれば、上場を維持することが前提である限り、なかなか全事業の本社機能をすぐに海外に移転するというのは難しいものがありますが、一部の機能を海外に移すことはできます。

 ?実例として、パナソニックは、2011年10月31日の同社プレスリリースにおいて、調達部門と物流部門の本部をシンガポールに移すことを発表しました。同プレスリリースによれば、海外での調達機能や物流機能の本拠地をシンガポールに移し、グループ全体としてのコストを削減することが目的で、当初は本部長を含む十数名が現地に移るということです。なお、日本国内での調達機能、物流機能はシンガポールには移さず、従来通り日本で行うとのことです。パナソニックのような方法で一部事業の本社機能を海外に移す流れは、上場会社が上場を維持したまま行うには現実的です。 

 日本での税務コストや、あるいは電気代などエネルギーコストが負担として重すぎるとの認識が広まるほど、上記の流れは加速すると思われます。

株式譲渡による方法

 本社を海外に移転する方法として、株式譲渡による方法も挙げられます。海外に本社となる会社を設立して、当該会社が日本の対象会社の株式を取得することで親会社となる方法です。この点、海外に本社を移転したからといって、必ずしも海外の本社としての会社が日本の会社の親会社になる必然性はありませんが、海外への本社移転という話題がでるときには、海外の本社が持ち株会社になるという方向で議論されることが多いです。

 日本の上場会社がこの手法で本社機能を海外に移す場合には、当該上場会社が海外の会社の完全子会社となる方向で進める限り、上場を廃止することが前提となります。実例としては、上場会社だったサンスターがMBO(マネジメントバイアウト)を行うプロセスにおいて、スイスに持ち株会社を置き、そこに本社機能を移す計画を実行していることが挙げられます。このように上場会社がMBOを行う過程でついでに本社機能を有する持ち株会社を海外に置こうという案件は、サンスター以降も見られるところであり、今後も増えることが予想されます。

三角合併による方法

 海外に本社機能を移転する方法として、もう一つ、三角合併のスキームにより行うことも考えられます。この手法により海外に本社を移転した事例はまだ存在しませんし、現実論としてこの手法がどれだけ使えるのか不明なところが大きいですが、次回、説明します。

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