千倉書房 連載ブログ

千倉書房 連載用ブログ


未公開会社のM&A — 株式譲渡か第三者割当か?(8)

  買収者が未公開会社を買収するとき、大株主から単純に株式を譲り受けるだけでもよさそうな場面で、それはしないで、当該未公開会社による第三者割当を通じて新株を取得するということが時々見られる。このとき、既存の大株主は、当該未公開会社による自己株買いに応じるという形で現金を手にすることが多い。そうなると単純な株式譲渡による場合と比べて最終的な到達点は同じである。すなわち、買収者は当該未公開会社の株式を取得し、他方、既存の大株主は株式を手放す代わりに現金を取得するという点だ。

課税関係の違い
  しかし、単純な株式譲渡と比べて、株式を手放す大株主における課税関係が異なる。単純な株式譲渡では、単純なキャピタルゲイン課税の問題だ。譲渡価格と取得費の差額がキャピタルゲインであり、税率は個人であれば20%、法人であれば約40%ということになる。他方、自己株式取得に応じた場合には独特の課税関係に服する。当該未公開会社から自己株式取得の対価として受領した現金について、その一部は「配当」として扱われ、残部は「出資の返還」として扱われる。まず、「配当」とされた部分は、個人であれば20%の税率で源泉徴収されつつ総合課税に服し、その所得の多寡に応じた税率で課税されるのに対して、法人株主であれば受取配当益金不算入制度により原則として課税されない。そして、「出資の返還」とされた部分は、取得費の額に達するまでは所得がないということで課税されず、むしろ取得費の額に達しない部分はキャピタルロスとして扱われる。このことは何を意味しているかというと、株式を手放す大株主が法人である場合には、単純な株式譲渡に比べて、会社による自己株買いに応じる場合のほうが一般的に税務上有利ということである。
 なお、自己株式取得の対価として受領した現金について、「配当」として扱われる部分と「出資の返還」として扱われる部分の境目とは何か?それは、当該未公開会社の「資本金等の額」のうち、取得される自己株式の部分に対応するものである。

タックスプランニングの「肝」と課税リスク
  今回とりあげたスキームのポイントは、法人株主にとってキャピタルゲイン課税よりも配当課税のほうが有利という点である(ちなみに、個人株主にとっては逆で、特に高所得者には配当課税よりキャピタルゲイン課税のほうが一般的に有利とされる)。このポイントを利用したタックスプランニングは、今回のスキームに限らず、色々な形で見られるところである。もっとも、税の軽減だけを考えてスキーム策定していると、課税当局から否認されるリスクが高まるので、そのようなスキームが税の観点以外から正当化できるのか、常に慎重な検証が求められることは言うまでもない。

コメントをどうぞ

コメントを投稿するにはログインしてください。