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日本的M&A手法:「第三者割当」に要注意!?(後編)(7)

税務上の問題
「第三者割当」の税務上の問題として何があるか?二つ思い当たる。一つは、時価より低い価格で株式が発行された場合、すなわち「有利発行」の場合に当該株式を引き受けた株主に課される所得税・法人税である。二つめは、第三者割当の結果、既存株主が株式を譲渡したのと同じ経済効果が発生することに着眼して課税当局がその既存株主に課税するリスクである。

「有利発行」
株式の「有利発行」というと、まずは会社法の問題として株主総会の特別決議が必要という点を想起する人が多いと思う。しかし、税務上の問題も忘れてはいけない。「有利発行」では株式を引き受ける者に課税所得が発生しているものとみられる。この点、どの程度のディスカウントによる株式発行であると「有利発行」とされるのか?会社法の場面であれば、原則としては取締役会の発行決議前日の終値の10%以上のディスカウントが問題とされる。税法の場面でも同様で、時価相当額に対しておおむね10%以上のディスカウントが課税の対象とされている(法基通2-3-7)。ただし、一つ気になる点がある。会社法と異なり、10%以上のディスカウントを判断する基準となる株価が必ずしも取締役会の発行決議前日の終値ではなくて、発行決議前1ヶ月間の平均が考慮される。株価下落傾向の局面では、会社法上は「有利発行」にならないと安心していても税務上は「有利発行」とされる余地がありうる。

隠された税務リスク—既存株主への課税
前述の二つめの税務上の問題を考える。株式の発行会社と当該株式を引き受ける者の二者間で行われる第三者割当の結果、その当事者でない既存株主に課税されるというリスクである。実際、そのように課税されて税務訴訟になった件もある(平成16年1月28日東京高等裁判所)。その件では、親会社と子会社があって、子会社が第三者に対して株式の有利発行を行ったところ、課税当局は、親会社から当該第三者への価値の移転があったと考えて親会社に課税した。裁判所もそのような考え方を肯定している。したがって、「第三者割当」においては、その直接の当事者でない既存株主の税務リスク(つまり発行会社の親会社のリスク)も考える必要がある。
なお、そのようなリスクは第三者割当と自己株式取得を組み合わせる場合に一層高まる。この点は少し複雑なので、次回説明する。

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