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日本的M&A手法:「第三者割当」に要注意!?(前編)(6)

第三者割当」という制度は日本のM&A手法の特色の一つといえる。「第三者割当」とは、要するに特定の者に対する新株発行を意味する。何故日本的手法なのかというと、日本の会社法の下では原則として取締役会の裁量でできるからだ。この点、欧米では基本的に株主総会の決議事項である。特定の者に対する新株発行は、既存の株主たちの持ち分が希釈化することを意味するので、株主たちが自分で決めるべきだという考え方に基づく。他方、日本では原則的に取締役会で決定され、例外として有利発行のときに株主総会決議事項となり、また不公正な発行と言える場合に株主が差し止めを求めうるという建て付けになっている。

上場会社による利用
「第三者割当」は、通常は会社の資金調達を目的としてなされる。しかし、異なる目的のために使われることも多い。上場会社では、敵対的買収への防衛策としての古典的手法であり、昔からその当否に関する議論が繰り広げられてきた。最近では、上場会社の非公開化のスキームに組み込まれる例も見られ、時々話題になる。上場会社の非公開化というのは、一般株主を強制的に追い出して、他の会社の100%子会社にすることを意味するので、本来は株主の総意によって決せられるべきものである。だからこそ、従来では、株主の意思を問うべくTOBを行って90%超の株主の応募があった上で実行するという手法が正当化された。しかし、最近では、TOBの補完として「第三者割当」を組み合わせたり、更にはTOBをそもそも行わないで「第三者割当」で少数株主の締め出しに必要な割合の株式を取得してしまうという凄いスキームまで現れている。経営陣の裁量でできる「第三者割当」を用いて少数株主を強制的に締め出してしまうというスキームには若干危うさを覚える。

非上場会社による利用 
非上場会社において「第三者割当」は、上述の上場会社の場面と同様の利用方法に加えて、税務の観点も強く意識される場面が多い。例えば、会社のオーナー株主がその会社の支配権を第三者に売却したいと考える場合に、その取引スキームに「第三者割当」をかませる例がある。オーナー株主からすれば、単純な株式譲渡よりも、対象会社による買主に対する「第三者割当」をスキームに組み込んだほうが課される税金額が低いという場面がある。その点も含めて、次回は「第三者割当」の税務上のポイントについて述べたい。

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