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日本の移転価格文書化について(23)

移転価格文書化について(その4)

 今回は、文書化の効果と文書化を行うにあたり検討すべき点をご説明します。
1 文書化の効果  今般の法令改正は、推定課税規定に係る価格算定文書の範囲を明らかにすることによって、推定課税等に係る納税者の予測可能性を確保するものですから、価格算定文書の作成・保存を一定の期間までに行うことを義務付ける同時文書化を求めたものではありません。しかし、納税者が独立企業間価格を算定しており、その算定に用いた書類が遅滞なく提示等された場合には、調査担当者は、まず当該書類等に基づいて独立企業間価格の算定ができるかどうかを検討し、これができないときにはその理由を納税者に説明して当該書類以外の書類の提示等を求められるとされています(移転価格事務運営要領2?5(1)(注)2)ので事前に文書化を行った場合の効果があります。したがって、推定課税規定の適用があるか否かにかかわらず移転価格文書化について検討されることをお勧めします。
2 文書化に当たっての検討事項
  (1)マスターファイルの作成
子会社がかなりの数存在する場合、すべての海外子会社毎に個別対応することは膨大な作業量になるばかりか、それぞれの海外子会社がそれぞれ独自で文書化を作成してしまうためコスト的にも非効率になります。また、子会社が独自に作成してしまうと、本社側では文書化の内容についてコントロールどころか日本語訳を作成していない場合は内容の把握さえできていない場合がままあります(調査時に検査を行う書類として、外国の文書化規定に従って作成された書類が含まれていますので注意が必要です)。そこでお勧めするアプローチはまず本社がグリップを握ってマスターファイルを作成します。これは、例えば海外子会社を製造業と卸売業等の機能別に分類し、それぞれの業種についての機能分析書の雛型を作成します。目標とする独立企業間レンジについても親会社側で算出します。この雛型をベースにそれぞれの子会社の個別情報を追加したり、違っている点を修正したりする作業を現地子会社に依頼します。こうすることにより、かなり整合性のとれた文書化が作成できますし、コストも個別にゼロからスタートして作るより経済的です。
  (2) 移転価格ポリシーの構築
全世界で整合性のある文書化を作成するためには、その骨子となる移転価格ポリシーの構築をしておくことが重要です。移転価格ポリシーとは、グループ会社全体としてどのような価格設定方針を採用するのか等について、グループで守られなければならない移転価格のルールです。将来、グループ内で大きな問題が発生しないよう、日本側だけでなく海外当局にも受け入れ可能なルールを作成しておく必要があると思います。また会社としての今後の経営方針とも整合しているかどうかも視野にいれて作成されることをお勧めします。
以上

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