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日本の移転価格文書化について(20)

移転価格文書化について(その1)

  今回からは、平成22年度の税制改正で明確化された「推定課税規定において提出又は提示を求められる書類」を中心とした改正の内容及びこの改正が今後の移転価格調査に与える影響について説明させていただきます。

  今回の移転価格税制の改正は、平成22年度税制改正大綱において「移転価格調査における納税者の協力が得られない場合の推定課税規定において提出又は提示を求める書類について、その範囲を明確にする。」ことが明記されたことを受けて行われた改正です。改正前の租税特別措置法第66条の4第7項(改正により第6項に変更)は、「当該職員が、法人にその各事業年度における国外関連取引に係る第1項に規定する独立企業間価格を算定するために必要と認められる帳簿書類又はその写しの提示又は提出を求めた場合において、当該法人がこれらを遅滞なく提示し、又は提出しなかったときは、次の各号に掲げる方法により算定された価格を独立企業間価格として推定して更正することができる。」と規定していました。
  この方法は当該法人の国外関連取引と同種の事業を営む法人で事業規模その他の事業の内容が類似するものの売上総利益率等を使用する方法であり、厳格な比較可能性の必要はありません。したがって、かなり荒っぽい課税となっていました。
  さらに、提出又は提示を求める帳簿書類は「独立企業間価格を算定するために必要と認められる帳簿書類又はその写し」と規定されており、納税者に不利益を課す推定課税の重要な要件である帳簿書類の範囲に関して抽象的であるとの批判がありました。調査担当者からは、十分な説明もなく「独立企業間価格を算定するために必要な書類である。」として、納税者が必要であるとは思えない資料の提出を求め、提出等しなかった場合には推定課税を行うと納税者にとっては脅迫的にもとられていたところがありました。

 改正後は、「独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類として財務省令で定めるもの又はその写し」と改正され、書類の範囲を財務省令(租税特別措置法施行規則)第22条の10において明確に規定しました。
 租税特別措置法第22条の10では、第1項を新設し、?その第一号において、国外関連取引を記載した書類の範囲を特定し、?第二号において、独立企業間価格を算定するための書類の範囲を特定しました。従来、調査で検査の対象となる書類の例は、移転価格事務運営要領2?4(調査時に検査を行う書類等)で記載されていましたが、法令上の規定からは課税当局への提示又は提出する書類の範囲が明確でありませんでした。
 今回の改正によって、推定課税規定に係る書類の範囲が明確化されたことから納税者の予見可能性が確保され、税務執行の透明化が期待されると思います。今後は、租税特別措置法施行規則で定められた書類又はその写しを当該職員が提示又提出を求めた場合に、遅滞なく提示し、又は提出しなかったときは推定課税が行われることとなります。
 次回は、明確にされた書類の範囲について説明します。

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