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司法上の権利救済手段を点検(10)

 納税者が税務行政当局の処分などについて「不服申し立て」をできることは前回述べた。その裁決になお不服がある場合、「税務訴訟」によって権利の救済を求めることができる。

 税務訴訟は行政訴訟(行政庁の処分に対する訴訟)のひとつであり、納税者からも税務行政当局からも独立した裁判所が、公平・客観的な立場から課税上の紛争を解決する制度である。

 日本には行政裁判所がないので、税務訴訟も一般の裁判所に起こす。ただし、裁判所へ直接訴えを起こすことは原則として認められず、先に不服申し立て手続きを経なければならない(不服申し立て前置き主義)。

 税務訴訟はこのように紛争の解決に長期間を要し、口頭弁論への出席、証拠提出などの事務的負担がかかるなど、利用しやすい制度とは言えない。このため納税者が平成18年度(2006年度、4月1日から翌年3月31日までの期間に起こした訴訟は477件と非常に少ない。このうち納税者の請求の全部又は一部が認められた割合は約17.9%にすぎない。

 現在、政府は司法制度改革の大きな柱の一つとして行政訴訟の改革を検討している。税務訴訟の制度も根本から見直し、納税者が救済を求めやすくすることが必要である。

 税務訴訟を開かれた制度とするには裁判の簡易化・迅速化が求められる。参考となるのは米国の税務訴訟制度だ。米国では、不服申し立て手続きを経ずに直接職務訴訟を行える。また、通常の裁判所のほかに租税事件を専門に審理する「租税裁判所」が設置され、日本と違い税金をいったん納付せずに訴訟が可能だ。特に少額の事件については審理の簡素化が図られている。

一方、税務訴訟において、司法による行政のチェック機能が有効に働いているかを検証することも重要だ。現在、裁判官の下で審理・裁判に必要な調査を行う裁判所調査官が、ほとんど税務行政当局からの出向となっている。処分庁である税務行政当局の裁判所への影響が排除できるのかも検討が必要である。

 税務訴訟の制度は納税者の権利の最終的な救済手段である。その改革を急ぎ、司法の税務行政からの権力分立を徹底して、裁判の公正性を高めていくことが課題である。

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