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倒産会社のM&A —債務免除益の課税への対応(3)

問題
 倒産に特有な税務の問題は何か?それは債務免除益の課税への対応である。倒産会社のM&A(民事再生手続か会社更生手続を想定)では、株式取得により倒産会社そのものを買収する場合に買収者の関心事となる。買収方法としては大きくみて二つ。株式取得により倒産会社そのものを買収するか、あるいは倒産会社から目当ての事業だけを切り出すか。例えば、倒産会社の事業にとって許認可が重要という場面では、買収者としては、その許認可を生かすべくその会社そのものを株式取得により買収したい場面がある。そのとき事業運営の障壁になるのが債権者の存在。もちろん、倒産手続を通じて既存の債権者の債権額は大幅にカットされることにはなるのだが、かえって新たな債権者が現れる。債務免除益に課税しようとする国だ。どうすればよいか?

解決方法
まずは債務免除益を相殺できるだけの損金があるかどうかを考える。含み損のある資産を売却して当期損失を捻出できないかとか、既存の繰越欠損金がどれだけあるか、など。この点、倒産手続のポイントは、?期限切れ欠損金が使えるということと、?資産の評価損を使えるということ。通常、繰越欠損金は過去7年間のものしか使えないが、倒産手続の場面ではそれ以前のもの(期限切れ欠損金)も使える。また、資産の評価損は原則として税務上の損にはならないものの、倒産手続では例外的に評価損を使える場合がある。

事業譲渡+清算スキーム
 債務免除益を有効に打ち消せるだけの損金がない場合には、倒産会社そのものの買収をあきらめ、欲しい事業だけ切り出して取得する手法を再検討することもある。こうなると、倒産会社が債務免除益の問題をどのように解決するかは買収者の関心事ではない。参考までに触れると、倒産会社は、事業譲渡+清算という手法で課税を免れる場合が多いようだ。清算手続では課税の仕組が変わることを利用したタックスプラニングといえる。つまり、通常時における課税所得は損益計算書(PL)ベースで判断される。他方、清算時には、貸借対照表(BS)ベースで課税所得を判断する。すなわち、債務免除益などPLベースでは益があっても、BS上、時価純資産額が資本金等の額と利益積立金の合計を下回れば課税されない。民事再生で事業譲渡+清算を盛り込んだ再生計画が時々見られる背景にはこうした事情がある。

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