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中国の移転価格税制(19)

中国の移転価格税制(その3)

 2003年頃の国家税務総局の新聞報道によれば、当時の外資系企業の相当数が実際には利益であるにもかかわらず虚偽決算によって欠損となっており、特に、広東省の委託加工企業では租税回避行為が比較的多いと報じられていました。このような欠損企業に対しては正常な利益率が適用されるべきとして移転価格調査が行なわれていましたが、当時は移転価格の算定方法として伝統的な基本三法が適用されており、利益分割法や取引単位営業利益法はまだ本格採用されていませんでした。

 しかし、2004年から伝統的な基本三法では比較可能取引を見出すことは困難であることから、代替的な利益分割法や取引単位営業利益法を選択適用できる方向に転換しています。このような方向転換に歩調を合わせて、比較可能取引や比較可能企業を見出すために、2004年には政府部門内のデータベースを活用するようになりました。2005年には海外情報会社のデータベースも活用するようになり、利益分割法や取引単位営業利益法の活用に合わせて、2007年から対象企業の機能リスク分析が重視されるようになりました。

 2007年には、中国国内の外資系の委託加工企業に対して機能とリスクの分析を行なって、単一の生産機能のみを有する委託加工企業については一定の利益が存在するはずであり、生産機能以外の機能がなくリスクも負わない委託加工企業が欠損や低い利益率を出すことはありえないとする政策が実行されています。

 2009年に制定された「特別納税調整方法実施弁法(試行)」は、それまでの移転価格税制と租税回避対策の実施状況を踏まえた包括的な租税回避対策税制です。

中国では、「特別納税調整」とは包括的な租税回避対策税制を総称する用語であり、この実施弁法(実施細則)には、すべての租税回避行為に関係する関連者の定義、移転価格文書、移転価格税制、事前確認制度、コストシェアリング契約、タックスヘイブン対策税制、過少資本税制、その他の租税回避対策税制、対応的調整と相互協議等の規定が含まれています。

 この中でも特に移転価格文書の作成規定は外資系企業に大きな影響を与えました。この実施細則によって、外資系企業は2009年6月末までに関連取引報告書を提出し、2009年12月末までに同期資料を提出することになりました。その後の年度については、関連取引報告書は企業所得税の確定申告期限である毎年5月末までに、同期資料は毎年6月末までに作成が義務付けられており、作成した同期資料は税務当局から要求された時には提出しなければなりません。

 同期資料とは、毎年の確定申告と同時期の移転価格文書です。同期資料では、その企業の組織構造と関連者との関係、生産経営の状況、関連取引の状況、機能とリスクの比較可能分析、移転価格算定方法の選択の理由とその使用条件についてのかなり詳細な記述が要求されています。また、同期資料の附属文書として、企業機能リスク分析表、企業年度関連取引財務状況分析表、企業比較可能性要素分析表の添付も要求されています。

 同期資料には、関連者との関連関係の認定、関連者間の機能とリスクの分析、関連取引と無形資産の関係、関連取引の財務分析、比較可能性要素分析、比較可能企業の機能とリスクと使用資産の状況、比較可能情報の情報源泉と選択条件とその差異調整、移転価格算定方法の選択と理由、価格算定方法をサポートする比較可能情報とその仮定と判断基準等の記載が要求されており、かなりの分量の資料となります。同期資料の作成と提出の義務は外資系企業に大きな負担となりました。

以上

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