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中国の移転価格税制(18)

中国の移転価格税制(その2)

 優遇税制と関連した移転価格については、当時の外資系企業の企業所得税法では2免3減といわれるタックスホリディがあり、企業が創業当初の欠損金を利益で補填して黒字となった2年間は免税、その後の3年間は税金が半減されていました。このタックスホリディが終了した後に移転価格により利益率を調整して租税回避を図る方法です。当時の国税当局によれば、このような利益操作が目に余る企業があったということです。

?? タックスヘイブンについては、実は、昔から中国への投資の多くがタックスヘイブン経由によるものでした。当時は、台湾も韓国も中国へ直接投資することができませんでしたので、タックスヘイブン経由で中国に進出していました。また、欧米系企業や華僑の中国投資の多くは、リスク回避と節税のためにタックスヘイブン経由で中国に投資していました。さらには、中国の内資企業であっても、当時の外資系企業の租税優遇政策の適用を受けるために、中国国内からタックスヘイブンに関連会社を設立して、その関連会社が中国国内に投資して外資系企業を設立するこということが一般的に行なわれていました。このようなタックスヘイブン経由の中国投資に関連して移転価格が行なわれており、2002年には、中国の長江三角州地域で、英領バージン諸島のタックスヘイブンによる租税回避の事例があったことが報告されています。

 最後に、移転価格と流通税についてですが、これも中国の移転価格税制の特徴の一つです。日本の移転価格税制は法人税のみが対象となりますが、中国の移転価格税制では日本の法人税に相当する企業所得税だけではなく、日本の消費税に相当する増値税や営業税、さらには日本の旧物品税に相当する中国の消費税についても移転価格税制が適用されています。中国の消費税は、自動車、ゴルフ用品、酒、煙草、化粧品等の高級消費財に課税される税金です。この消費税はメーカーの工場出荷価格に課税するため、販売子会社を設立して工場出荷価格を意図的に低くして消費税を軽減する租税回避行為がありました。当時の中国では、各地域によって企業所得税の税率も異なっていたため、税率の低い地域に販売子会社を設立して、基本税率が課税される製造工場の工場出荷価格を低く設定して、企業所得税と消費税の租税回避を行なうことがあり、移転価格税制は企業所得税だけではなく消費税についても同時に適用されるものとなっていました。

 このように地域によって企業所得税の税率が異なる状況があったからかもしれませんが、中国の移転価格税制の最も大きな特徴は国外取引だけではなく、中国国内取引についても移転価格税制が適用されることにあります。

中国の移転価格税制は国外関連者との取引だけではなく、国内関連者との取引も移転価格税制の対象となります。日本の移転価格税制では国外関連者との取引のみを移転価格の対象としていますが、中国の関連者の定義には国外関連者の用語はありません。関連者は国外とともに国内にも存在することになります。

 中国は大きな国ですので、各地方の省政府がかなりの権限を持っており、中央政府の国家税務総局の指導の下に、省、直轄市、計画単列市、自治区等の省レベルの地方政府は、その行政単位に応じて国税と地方税を徴収する税務機関を持っています。この各地方政府の国家税務局の管轄区域を超えて取引される関連者間取引は、中国国内では移転価格税制の対象取引となります。

 前回紹介した資本弱化についても、貸付利率を調整する移転価格は、中国国外との関連者取引のほかに中国国内の省を跨る関連者間取引についても適用されていました。現在では限定的となりましたが、今でも企業所得税の税率が異なる地域は残っており、税率の異なる地域との関連者間取引については租税負担が減少されるため移転価格税制が適用されます。

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