千倉書房 連載ブログ

千倉書房 連載用ブログ


中国の移転価格とAPA その2

3. 2010年報告書の統計データ

 ここでは2010年次報告書に記載されているデータとその分析内容に即して中国のAPAの現状を紹介します。

? 中国政府が締結したAPAの件数

年度

ユニラテラル

バイラテラル

マルチラテラル

合計

2005

13

1

0

14

2006

10

0

0

10

2007

7

3

0

10

2008

6

1

0

7

2009

5

7

0

12

2010

4

4

0

8

合計

45

16

0

61

 APAには、ユニラテラル、バイラテラル、マルチラテラルの3つがあります。

 ユニラテラルは、企業とその所在国の税務機関が締結するものであり、その国内の関連取引の移転価格決定方法を確定するものです。企業の国外関連者の所在国すなわち相手国の税務機関の移転価格調査実施による修正のリスクを回避することはできません。ユニラテラルAPAでは国際的な二重課税を避けることができないという制約があるため、上記の統計データが示すように中国でも減少傾向にあります。

 企業と2つ以上の国家の税務機関が締結するAPAには、二国間のバイラテラルと多国間のマルチラテラルがあります。これらのAPAは企業の国境を越えた取引の移転価格決定方法について二国間または多国間で合意するものであり、国際的な二重課税を有効に回避することができます。上記の統計データでは、バイラテラルは6年間で16件が締結されていますが、マルチラテラルはまだ実績がありません。

? APAの進行状況別の統計データ

進行状況区分

ユニラテラル

バイラテラル

合計

受理以前

協議締結の意向段階

4

24

28

予備会談

27

10

37

合計

31

34

65

受理段階

審査評価

3

9

12

協議

1

12

13

合計

4

21

25

合意達成

合意達成、ただし未締結

3

2

5

税務機関の監督執行段階

11

13

24

APAの期限満了段階

34

3

37

合計

48

18

66

総計

83

73

156

 APAの進行状況別の統計データは2005年1月1日から2010年12月31日までのデータに基づいています。進行状況はAPAを受理する前段階として意向段階と予備会談があり、受理段階としては税務機関が正式な申請表を受領した時から始まる審査評価段階と合意達成直前の協議段階があります。合意達成後の段階には、合意書の未締結段階と締結後の税務機関による監督執行、APAの期限満了段階があります。

 上記の統計データによれば、ユニラテラルは期限満了が34件あり、バイラテラルはまだ3件に過ぎません。合意書の期限延長については、2010年次報告書では、新たに次のような文言が追加されました。

 四分位範囲を採用した場合において、企業のAPA実施期間の利益水準が多くの場合に中央値以下にとどまるならば、税務機関は期限延長の申請を受理しないことができます。

 企業の適正な利益水準を決定する場合には、1つの適正な利益水準だけではなく、利益水準の適正な幅(範囲)を決定するために四分位法が採用されています。四分位範囲とは、データのばらつきを排除するために、最大値と最小値の2つの値が含まれている、小さい方の1/4のデータと大きい方の1/4のデータを捨てて、残った中央部分のデータ(全体の半分)の範囲をいいます。その四分位範囲のデータの真ん中のデータを中央値と呼びます。

 移転価格税制では、税務機関が四分位法を採用して企業の利益水準を分析して評価する時は、企業の利益水準が比較可能利益の四分位範囲の中央値より低い場合は、原則として中央値より低く調整してはならないものとされています。

この規定は、国家税務総局が2009年1月8日に発布した「特別納税調整実施弁法(試行)」に定められました。したがって2010年次報告書では、これを受けて、APA期間の企業の実際の利益水準が比較可能企業の中央値以下にとどまる場合には、その合意書の期限は延長しないものとされました。

 上記の統計データによれば、APAの受理以前の件数はユニラテラルとバイラテラルでほぼ同じ件数であるが、受理段階の件数はユニラテラルが4件であるのに対して、バイラテラルが21件あり、趨勢としてはバイラテラルの案件が増加する傾向にあります。

コメントをどうぞ

コメントを投稿するにはログインしてください。