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中国の移転価格とAPA その4【完】

? APAで使用された移転価格決定方法

 中国政府が2005年から2010年までに締結したユニラテラルとバイラテラルのAPAで使用された移転価格決定方法は、次のとおりです。

移転価格決定方法

件数

独立価格比準法(Comparable Uncontrolled Price Method)

4

再販売価格基準法(Resale Price Method)

0

原価加算法(Cost Plus Method)

16

取引単位純利益法(フルコストマークアップ率)

(Transactional Net Margin Method?Full Cost Mark-up)

19

取引単位純利益法(運転資産収益率)

(Transactional Net Margin Method?Return on Capital Employed)

0

取引単位純利益法(営業利益率)

(Transactional Net Margin Method?Return on Sales)

23

取引単位純利益法(ベリー比率)

(Transactional Net Margin Method?Berry Ratio)

0

利益分割法(Profit Split Method)

2

その他方法(Other Method)

2

?

 ?2010年報告書によれば、取引単位純利益法(TNMM 取引単位営業利益法)が最も一般的な価格算定方法であり、42件で全体の64%を占めています。取引単位純利益法とは、関連関係のない取引各当事者が同種または類似の取引を行って取得する純利益水準により利益を決定する方法をいいます。取引単位純利益法の利益率指標については、営業利益率が23件であり、フルコストマークアップ率は19件となっています。

? 最近では、中国税務部門は公開データベースを広範に運用して、取引単位純利益法をAPA協議において使用する最も頻度の高い方法としています。また、取引単位純利益法は、残余利益分割法における基本的利益(通常の利益)を決定する際にも一般的に使用されています。

? なお、利益分割法とは、企業とその関連者の利益を合算して各当事者間で合理的な基準により利益を配分する方法であり、残余利益分割法とは合算利益から各関連者の通常の利益(基本的利益)を差し引いた残余利益を無形資産等による特別な利益として算定する方法です。

 取引単位純利益法の次に使用されている価格算定方法は原価加算法です。原価加算法とは、原価に合理的費用と利益を加算して価格決定を行う方法で16件となっています。

 なお、2009年と2010年の年次報告書によれば、2010年単独では、取引単位純利益法の営業利益率による方法が3件、取引単位純利益法のフルコストマークアップ率による方法が4件、原価加算法が1件、合計で8件が1年間で締結されています。

? 独立価格比準法、利益分割法、その他方法は件数が比較的少なく、再販売価格基準法は全く使われていません。その理由として、独立価格比準法とは関連関係のない非関連者が行う同種または類似の取引価格により価格決定を行う方法ですが、非関連者の製品と取引の比較可能性の要求水準が非常に高いため利用する困難性が高く、実際の利用件数は4件しかありません。

? 再販売価格基準法とは、関連者が仕入れた商品を非関連者に再販売する価格から同種または類似の取引の売上総利益を差し引いて価格を決定する方法であり、利益分割法とともに、非関連者の取引と価格について満足し得る情報提供が要求されることから、これらの方法はAPAの実務では運用されることがないか、あっても極端に少ないものとなっています。

? 中国税務機関としては、税務担当官の審査業務をより円滑に行い、企業が取引と価格の満足し得る情報を提供して、再販売価格基準法と利益分割法等の移転価格決定方法をさらに運用していきたいと望んでいます。

(MIZUHO? CHINA MONTHLY 2012年5月号寄稿)

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