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上場会社同士の株式対価M&A(4)

  不景気な状況下、これまで競合してきた上場会社同士がシナジーを求めて統合する例が増えている。特に最近の統合案件では、なるべく現金の支出をおさえたいという要請が強いようだ。そうなると現金を使わないM&A手法が検討されることになる。具体的には、現金で株式を取得するという方法をとらず、合併、株式交換、または株式移転という手法による統合である。私が所属する法律事務所では、昨年からこの種のM&Aに関する相談が増えている。特に最近の特色は、昔と異なり米国株主が増えていることを背景に、純粋な国内案件といえども米国証券規制が適用されるリスクにどのように対応するのかを真剣に検討する日本企業が増えている。もっとも、ここでは例によって、あくまで税務上の問題について言及する。

含み益への課税
  現金の支出を最小化したい場合、当然、税務の検討の優先順位は高くなる。具体的に心配なのは、まず当事会社の資産に関する含み益に課税されないかということである。M&Aを実質的にとらえると一方の会社の資産が譲渡されるという側面があるので、その譲渡資産に含み益がある場合には、それが譲渡によって実現し、法人税の課税対象となるのである。例えば、合併であれば吸収されて消滅する会社の含み益に課税され、他方、株式交換や株式移転では完全子会社となる会社の含み益に課税されるのが原則だ。

適格組織再編税制
  含み益に課税されることを避けたい場合には、例外的なルールの適用ができないものかと検討することになる。それは適格組織再編税制とよばれているものである。この税制が適用されるのであれば、M&Aの当事会社の資産の簿価は、そのM&Aの実行後もそのまま維持されることが認められるので、含み益に課税されることはない。その税制が適用されるためには、まず、そのM&Aが3つある類型のどれかに該当する必要がある。それは、?100%のグループ内における再編、?50-100%のグループ内における再編、及び、?共同事業類型である。ここで念頭に置いている場面は、競合してきた上場会社同士の経営統合であるので、グループ内の再編ではありえず、残るは?の共同事業類型に該当するか否かという問題である。

上場会社同士のM&Aが共同事業類型に該当するためには、(a)事業関連性、(b)従業者80%以上の承継、(c)事業継続性、(d)規模要件又は経営参画要件などを充たす必要がある。これらの要件は簡単に充足できるものではなく、個別事案ごとに問題になりうる。次回、その点をもう少し詳しく述べる。

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