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「グローバル企業の行き過ぎた節税戦略」を検証する。その2 

グローバル企業の行き過ぎた節税戦略がもたらす現象をOECDは、“Base Erosion(「税源浸食」と訳す)”と呼んでいます。税源浸食の議論を進めるにあたって「BEPSレポート 」とその翻訳(租税研究2013.5)を参考文献として利用しております。しかし、本ブログ記事は、かなり私見を述べています。ですから「BEPSレポート」(注1)の解説書とは考えないようお願いします。

今、日本の法人税の実効税率は38%です。一方、中国、マレーシア、ベトナムの法人税の税率は25%です。この現状を踏まえて、グローバル企業の行き過ぎた節税戦略に関するプロローグの議論を進めたいです。

【設定】
・ A社はIT関連機器を製造販売する日本企業である。
・ すべての研究開発、製造、販売を日本で行っていた。
・ しかし、日本の人件費が上がりA社製品の国際競争力が落ちてきた。1,000円で売れていた商品の価格はグローバル化したマーケットでは850円まで下げる必要性が生じた。
・ A社は生き残りを賭けて、本社機能のみを日本に残し、すべての研究開発、製造、販売機能をベトナムに移した。ベトナムの人件費は日本のそれの半分である。

【事業再編前の収益状況】
すべての研究開発、製造、販売を日本で行っていた時のA社の連結損益計算書は以下の通りです。

A社製品の国際競争力が落ちた状況の下、従来通りのビジネスモデルを続けていると次年度の売上は850まで減少し、発生するコスト900をカバーすることが出来ず、赤字に転落してしまいます。

【事業再編後の収益状況】
そこで、A社は生き残りを賭けて、本社機能のみを日本に残し、すべての研究開発、製造、販売機能を人件費が日本のそれの半分であるベトナムに移しました。

事業をベトナムに全面的に移したこと、つまり人・物・カネを移動させることによって、グローバルマーケットを失うことなしに事業活動を行うことが可能となります。税金の欄を注目して下さい。事業再編前の税金は38ですが、事業再編後の税金は25になっています。その結果、収益性も改善されています。一挙両得の効果があります。留意すべき点は、事業再編前の税金38は、法人税として日本政府が徴収できますが、事業再編後の税金25は全く日本国の歳入になりません。すべてがベトナムで支払われます。確かに税源は日本からベトナムに移転しています。日本の税収が減ることは日本国にとって由々しき問題ですが、グローバル企業の観点からすれば、やむを得ない選択と思われます。

(注1)「BEPSレポート」:OECD のレポート“Addressing Base Erosion and Profit Shifting”

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